「日本語教師」のために――専門職としての実践的手引書
記事:明石書店
記事:明石書店
日本語環境で育ち、日本語で生活し、日本語で会話し、日本で仕事をし、日本語で恋愛し……。これらすべてがそろってできる日本語ネイティブスピーカーなら日本語教師はできるのだろうか? 「私は日本語の読み書き、会話がきちんとできるから、日本語教師なら務まるにちがいない」と思っている「日本人」はけっこう多いのではないか。定年退職後の職業に、あるいは社会貢献に日本語教師を希望する人も多いという。
日本語教師とは、はたしてボランティアなのか、専門職なのか。ボランティアであれば、教師としてのレベルは問題にされることはないのだろうか。
2019年、日本の高等教育機関や日本語学校で学ぶ外国人は140か国以上の国からやってきて31万2000人をこえていたという。この数字は、2020年までに留学生30万人を目指していた日本政府の目標を達成した事実を示している。
この内、22万8000人あまりが大学などの高等教育機関の学生だ。文部科学省の統計では、日本の高等教育機関で学ぶ学生の総数は約294万なので、その内の8パーセントが外国人留学生であることが分かる。
さて、そこで留学生に日本語を教える日本語教師はどれくらいいるのか。日本語教育実施機関で教えている「日本語教師」は4万1000人で、ボランティアが55パーセント、非常勤は31パーセント、常勤は14パーセントという内訳だ。ここから単純に割り算をすれば、教師一人当たりの生徒数は7.6人ということになる。
しかし、教師の半数以上がボランティアであることは気がかりだ。
日本語が自由に使いこなせれば、漫然と日本語を教えることができるわけではない。日本語を知らない(はじめて学ぶ)外国人が、日本語の構造を理解し、文を構成できるようになる、聞き取り可能な発音を身につける、日本語で文章をつくる、日本語で議論する……。それらを教えるために必要な日本語の理解、教え方、そして他者(外国人学生)理解はどうすればいいか。
本書は、著者の「日本語教師」としての多年の経験・研究に基づいて、最新の学問的な知見も駆使して日本語を合理的に教えるために書かれた。あわせて、異文化(日本社会)のなかで暮らす外国人留学生の心理によりそって彼/彼女らへの理解と共感に基づく実践への導きとなっている。
いま、現場で日本語教育に取り組んでいる「日本語教師」たち、これから「日本語教師」を目指す人たちにぜひ、おすすめしたい。