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J. S. バッハによるパイプオルガン曲「全部入り」! 事典のような1冊で、「あの曲」を探しに行こう

記事:朝倉書店

 キリスト教系の学校出身の方にはわりと身近だったかもしれない、パイプオルガン。
 日本では足踏みリードオルガンとの区別のために「パイプ」をつけて呼ぶこともよくありますが、欧米では「オルガン」といえばパイプオルガンをさします。
 教会との関連が深い楽器ですが、最近は、公共ホールにある大きなオルガンでも、お昼どきに無料 or 1ドルコンサートが開催されるなど、誰でも気軽に聴きに行ける機会が増えてきています。

 本書は、バロック時代の巨匠・J. S. バッハが作曲したオルガン曲(約310曲)をすべて網羅し、作品番号(BWV)順に並べ、1曲1曲を個別に解説した「事典」のような1冊。
 バッハの音楽が好きという方、ぜひ、学校の礼拝で、コンサートで、またCDで聴いたことのある「あの曲」を、あるいはまだ出会っていない新たな1曲を、この本で探してみてはいかがでしょうか。
 元資料やこれまでの研究成果、他の作品との関係など、専門的な情報も含まれますが、譜例も豊富に示され、曲の構造やモチーフ・テーマの解釈のヒントがわかり、また賛美歌の旋律に基づく曲では、歌詞はすべてわかりやすい口語訳で掲載されています。巻末には用語解説ページや、充実した索引、年表も……。プログラムノートやCDの解説書よりも一歩も二歩も踏み込んだ知識が得られて、きっと、聴く人も弾く人も、バッハの音楽により近づくことができるはずです。
 以下に、バッハ・コレギウム・ジャパン音楽監督の鈴木雅明先生による推薦文、ならびに、監訳者の廣野嗣雄先生・馬淵久夫先生による「刊行にあたって」の一部をご紹介いたします。

■推薦文:鈴木雅明先生(バッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)音楽監督)より
 長年にわたり私が繰り返し参照してきたP. ウィリアムズの名著がついに翻訳されたと聞いて、これほどうれしいことはありません。
 本書は、バッハのオルガン全作品を網羅するだけでなく、チェンバロや声楽作品との比較、影響を受けた作曲家の考察、さらには演奏上の問題にまで踏み込んだ、驚異的な広がりと深さを持つ圧倒的な研究書です。著者の膨大な知識とつきることのない探究心が生み出したこの一冊は、オルガニストやバッハ愛好家のみならず、すべての音楽ファンにとって必携の書と言えるでしょう。
■本書「刊行にあたって」より
 本書は、不朽の世界的名著“The Organ Music of J. S. Bach” I & II, Cambridge University Press (1980年) の改訂版 (Second edition、2003年) の全訳である。……(中略)……
 今日では、本書の基礎となっている諸情報が、すでに古いとの批判もある。しかし、バッハの作品であることが不確実な作品を含め、全オルガン作品を扱っていること、そして全コラールの旋律、口語訳で歌詞の第1節を掲載している研究書は未だに他にない。また自筆譜、筆写譜その他の基礎データの提示、作品に関連するおびただしい研究書や論文の引用、オルガン作品はもとより、チェンバロ、室内楽、オーケストラ作品、カンタータや受難曲そのほか数多くの他作品との比較など、演奏家、研究者に限らず幅広い読者に向けて客観的情報を提供し、読むことを通して考えることを促してくれる内容が、本書の名著としての価値を高めている。時に独断と思える箇所もあるが、読者は、著者の尽きることのないバッハへの愛がバックグラウンドにあることを感じられるであろう。
  膨大なデータを内蔵する本書の訳出と監訳には多くの点で配慮を重ねた。1つは、いかなる書籍でも免れ得ない印刷物が含むミスの可能な限りの修正、および新しい情報の補足である。次に、原書にはない後付けの曲名索引で、本書の事典としての性格を補強するもの。第3に、後付けの用語解説 (Glossary) 日本語版の作成である。英語で書かれた原書には、バッハのコスモポリタンぶりを反映して、ラテン語・イタリア語・ドイツ語・フランス語などが随所に出現する。言語体系が違う日本の読者の理解度は、当然、欧米諸国の読者のそれとは異なるであろう。日本語版では、とくにコラール作品の理解に欠かせない歌詞の翻訳には細心の注意を払った。また原書のGlossaryの項目を取捨選択し、新項目を追加し、訳文を生かしながら理解しやすい文章になるように努めた。原著の独特で時に難解な文体の訳出には、総勢9人が分担してこれにあたった。……(中略)……
 この世界的名著がバッハを愛し,オルガンを愛する読者諸氏のお役に立てることを切に願っている。

『J. S. バッハのオルガン音楽 全曲解説』朝倉書店
『J. S. バッハのオルガン音楽 全曲解説』朝倉書店

目次
■第I部 自由作品
1. 教会カンタータ131より BWV 131a
2. 6つのソナタ BWV 525~530
3. 前奏曲とフーガ BWV 531~552
4. 8つの小前奏曲とフーガ BWV 553~560
5. その他の個別の作品 BWV 561~591
6. 協奏曲など BWV 592~598

■第II部 コラール作品
7. オルガン小曲集 BWV 599~644
8. シュープラー・コラール集 BWV 645~650
9. 旧称「18のコラール」(いわゆるライプツィヒ・コラールとそのヴァイマル版)  BWV 651~668
10. クラヴィーア練習曲集第3部のオルガン・コラール BWV 669~689
11. 旧称「キルンベルガー・コレクション」のオルガン・コラール BWV 690~713
12. 種々のオルガン・コラール BWV 714~765
13. コラール変奏曲 (パルティータ)  BWV 766~771
14. 4つのデュエット (クラヴィーア練習曲集第3部より)  BWV 802~805
15. 種々の小品 BWV 943---1085
16. ノイマイスター・コラール集のオルガン・コラール BWV 1090~1120
17. さらなる作品 (一部は出所不明)
[監訳者注記] BWV 1128

年  表
用語解説
文  献
自由作品索引
コラール作品索引
その他の作品索引
人名索引

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