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国家、超富裕層のターゲットとなったサッカー界の現状を描く――『フットボール・マネー』著者、ミゲル・デラニー氏インタビュー

記事:平凡社

サッカーは年々、「お金」「権力」と密接に絡み合い、その傾向はより一層強まっている
サッカーは年々、「お金」「権力」と密接に絡み合い、その傾向はより一層強まっている

ミゲル・デラニー著、山中拓磨訳『フットボール・マネー 資本主義と権力闘争のゲーム』(平凡社、2026年4月20日刊)
ミゲル・デラニー著、山中拓磨訳『フットボール・マネー 資本主義と権力闘争のゲーム』(平凡社、2026年4月20日刊)

2022年のカタールW杯とサウジリーグ

山中拓磨(以下、山中):『States of Play』はミゲルさんの初の単著ですね。どのような経緯でこの本を書こうと思ったのでしょうか。何かきっかけとなる特定の出来事があったのですか。それともどちらかというと取材などを進めるうちに徐々に本のコンセプトが形作られた、というイメージでしょうか。

ミゲル・デラニー(以下、ミゲル):そうですね。後者のほうです。日々の取材や記事執筆が積み重なっていき、最終的に本というかたちに仕上がったという方が近いだと思います。ですから、私が新聞記者として15~20年間報じてきた内容の集大成のような本になったのではないかと思っています。

 ただ、特に重要な出来事はいくつかありました。その一つが2022年のカタールW杯でした。私は取材でカタールの首都、ドーハに滞在していました。そして2023年にサウジアラビアの政府系ファンドがサウジのプロリーグに巨額の投資をするという計画が発表されました。クリスティアーノ・ロナウド、ネイマールなどがサウジリーグにやって来たのです。この動きはサッカー界の現在地を如実に示しているように感じられました。

 2022年のW杯開催時、既に国家や超富裕層がサッカー界に接近していたこともありましたので、これらをテーマにした本を書けないか、という構想を漠然と描いていました。そしてこの本の担当編集者のティアニーも全く同じ考えを持っていたようで、「よし、本を作ろう」ということになったのです。それから約2年後に完成したのが『States of Play』でした。

山中:この本(英語版)はサッカー界と専制国家の関係性以外の多くの内容にも触れています。例えば、スポーツウォッシングや超巨大資本によるクラブの買収などです。

ミゲル:サッカー界の競争のバランスの崩壊に関しては今から約10年以上前から課題になっていました。2013-14シーズンのチャンピオンズリーグ(CL)の決勝でレアル・マドリードが劇的な同点弾のあと延長戦でアトレティコ・マドリードを下した年ですが、既にこういったスーパークラブと他のクラブの差が大きく開いている、というのを感じていました。

シティのファンから罵声を浴びせられたことも

山中:『States of Play』の取材や執筆に際して特に困難だったことなどは何かありますか?

ミゲル:本書の性質的に、多くの人が私と話したいと思ってくれた一方、実名で記録に残るような形では掲載されたくない、という人が多かったのが少し大変でしたね。

 ただ、出版後に一度話をしてみたかったと私が考えていた人からコンタクトを貰えることもあり、これは改訂版を書くにあたってとてもありがたかったです。

 また、『States of Play』の内容はそれぞれが複雑に絡み合っており、一つのトピックの取材をしていると、一章分を割くに値するまた別の課題が現れる、ということが起き、膨大な内容を一冊の本としてどのような構成にまとめるかを考える、という部分も苦労しました。

 そして、これは書籍の出版だけでなく、普段の新聞記事の執筆や公開にもつきものなのですが、サッカーファンからのSNS上での反発も受け、誹謗中傷を受けるだけなく、さらにこれがオンライン上に留まらず、現実世界にも波及することがありました。

 マンチェスター・シティのオーナーシップは本書の主要なトピックの一つですが、第一版が出版されたのが、マンチェスター・シティが三冠を達成した直後で、私が「Independent」紙の取材でCL決勝の会場を訪れた際に、私の顔を知っていて、空港で私を見つけたファンから暴言を浴びせられる、のようなこともありました。

FIFAやUEFAが抱える問題

山中:『States of Play』の取材を始めてから改めて感じたことや知ったこと、想定外だったことなどはありますか?

ミゲル:もともとサッカー界の全体の組織体制や統治構造の問題について知っていましたが、どちらかというとクラブサッカーレベルでの出来事に注目が集まることが多いので、国際サッカー連盟(FIFA)や欧州サッカー連盟(UEFA)の抱える構造的な大きな問題に関しては、改めて目を見張るような思いでした。

 もちろんこれらの組織の内部にも、サッカー界がどのような方向に進むべきなのかを真剣に考えている人は多くいます。ですが、そういった議論が組織のトップまでくみ上げられることはほとんどありません。

山中:最後に、日本の読者へのメッセージをいただけますでしょうか。

ミゲル:もちろん、まずは本書を読んでみてくださいね!と伝えたいです(笑)。また、この20年間、少しずつの変化が積み重なり、サッカーは本来の在るべき姿とは異なる方向に進み始めています。

 これは日本の方に限らずですが、読者の方にはこれを認識し、本書の、サッカーの本当の価値や、どうあるべきなのか、どのようなポテンシャルを秘めているのかを認識し、それを守っていくべきである、というメッセージに共感してもらえることを願っています。

インタビューに答えるミゲル・デラニー氏
インタビューに答えるミゲル・デラニー氏

(取材・構成=山中拓磨、平凡社 平井瑛子)

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