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「島に住む人類―オセアニアの楽園創世記」書評 文字なき時代の遺伝子収集

評者: 円城塔 / 朝⽇新聞掲載:2017年10月08日
島に住む人類 オセアニアの楽園創世記 著者:印東 道子 出版社:臨川書店 ジャンル:歴史・地理・民俗

ISBN: 9784653043645
発売⽇: 2017/08/08
サイズ: 20cm/276,5p

島に住む人類―オセアニアの楽園創世記 [著]印東道子

 アフリカに生まれた人類が、何万年かをついやした移動の末に太平洋岸へ進出をはじめたのはおよそ六万年前あたりのことらしい。
 ひとくちにオセアニアといっても、ひろい。最近の研究によれば、最後の大きな無人島であったニュージーランドにポリネシア人が住みはじめたのが、ほんの七〇〇年前であるという。
 こと文字情報が残されていない時代、地域の話であるから、地道に土器や釣り針を調べ、言語学的な調査を行い、遺伝子を収集することになる。
 西洋人の探検家が世界の反対側で発見する「楽園」というイメージの強いオセアニアだが、当然「発見」される側の人間が先に暮らしていた。
 現在も続く「発見」は楽園の姿を書きかえつつある。たとえばイースター島では、モアイを作成するために木を切りすぎて自然が破壊されたといわれてきた。楽園に住む人間はそこまで素朴なものなのか。そんなはずはないだろうと本書はいう。