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丹念に追った、変化する関係

琉球王国と戦国大名 島津侵入までの半世紀 (歴史文化ライブラリー) 著者:黒嶋 敏 出版社:吉川弘文館 ジャンル:歴史・地理・民俗

価格:1836円
ISBN: 9784642058216
発売⽇: 2016/02/19
サイズ: 19cm/225p

1609年の島津侵入事件は、強者による単純な軍事侵攻だったのだろうか。琉球と島津氏ら戦国大名の半世紀におよぶ政治的な駆け引きを追う。緊迫感ある外交展開を描きだし、琉球と薩…

評者:本郷和人 / 朝⽇新聞掲載:2016年03月27日

琉球王国と戦国大名—島津侵入までの半世紀 [著]黒嶋敏

 1609年、鹿児島藩主の島津家久は、3000人の軍兵を琉球(中山)王国に派遣した。ほとんど戦闘を経ることなく島津軍は首里王城を制圧。国王尚寧(しょうねい)は鹿児島を経て江戸に赴き、徳川将軍家に対し従属の礼を執った。また家久に対しては「琉球は古来島津氏の附庸(ふよう)国である」と記した起請文(きしょうもん)を提出し、これ以後琉球は鹿児島藩の間接的な支配を受けることになる。
 附庸国、というのはありていにいえば属国ということか。だが、歴史をひもとき、史料をきちんと読んでみると、「島津氏が上、琉球が下」という固定した関係があったわけではないのだ。島津氏には島津氏の浮沈があり、琉球には琉球の事情がある。もちろん琉球が頭(こうべ)を垂れることはあったが、時に島津氏が下手に出ている事例も確認できる。本書は東アジア情勢の確かな理解を踏まえて、状況とともに変化する両者の関係を丹念に追っていく。
 柄谷行人氏は本欄(2014年9月21日付『琉球独立論』書評)で「理解しがたいのは、琉球が日本から独立しないでいることである」と書いた。この一文を読んだときの衝撃はいまだに忘れられない。米軍基地をめぐり沖縄と官邸とがぎくしゃくし、沖縄独立がしきりに唱えられている。その中で責任を引き受けてかかる発言をする勇気を、今の私は到底もてない。
 歴史を勉強してきて漸(ようや)くつかめたのは「日本は一つの国である」という常識には疑う余地がある、という感触である。たとえば古代の東国に朝廷の威令は届いていまい、戦国大名は独立した地域の王と捉えられる等々。歴史研究者たる私は、日本はいかなる国だったかを見据えた上で、沖縄にどう向き合うかという問いへの答えを探していこうと思う。その一環として史実を正確に知ることは不可欠であり、そのために本書は有意義な情報を与えてくれる。信頼できる一冊である。
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 吉川弘文館・1836円/くろしま・さとる 72年生まれ。東京大学史料編纂所助教。『中世の権力と列島』『天下統一』。