「うな丼の未来」書評 絶滅に瀕した稀少種どう食べる
評者: 内澤旬子
/ 朝⽇新聞掲載:2014年01月19日
うな丼の未来 ウナギの持続的利用は可能か
著者:東アジア鰻資源協議会日本支部
出版社:青土社
ジャンル:自然科学・環境
ISBN: 9784791767373
発売⽇:
サイズ: 19cm/275,3p
うな丼の未来―ウナギの持続的利用は可能か [編]東アジア鰻資源協議会日本支部
ついこの前までスーパーの惣菜(そうざい)コーナーにあると思っていたら、急に高騰したうなぎの蒲焼(かばや)き。養殖で安定供給されていると思い込んでいたニホンウナギが、絶滅の危機に瀕(ひん)しているという。一体どういうことなのか。
本書は昨年7月に書名と同じタイトルで、東京大学にて開催されたシンポジウムでの講演やアンケートなどを忠実に再現したもの。
実は野性の稚魚を獲(と)ってきて大きく育てたものを「養殖」と呼んでいたことをはじめ、人工孵化(ふか)は、どこまで可能になってきたのか、そもそもどういう生態なのか、「絶滅危惧種」に指定されたらどうなるのかなどなど、ニホンウナギとうなぎ食にのしかかる現状と問題点が、22人の研究者、漁業関係者の発表から明らかになる。
稀少(きしょう)な野生種をあまりにも雑に食べてきたことを反省しつつ、今後うなぎをどう食べるべきか、理性的な消費を促すためにも、多くの人に読んでほしい。
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青土社・1995円