1. HOME
  2. 書評
  3. 「アメリカ音楽史」書評 「擬装」鍵に米音楽史解読

「アメリカ音楽史」書評 「擬装」鍵に米音楽史解読

評者: 朝日新聞読書面 / 朝⽇新聞掲載:2011年05月29日
アメリカ音楽史 ミンストレル・ショウ、ブルースからヒップホップまで (講談社選書メチエ) 著者:大和田 俊之 出版社:講談社 ジャンル:新書・選書・ブックレット

ISBN: 9784062584975
発売⽇:
サイズ: 19cm/302p

アメリカ音楽史―ミンストレル・ショウ、ブルースからヒップホップまで [著]大和田俊之

 19世紀に流行したミンストレル・ショーとは、白人が顔を黒塗りして演技する大衆芸能で、ミュージカルの形成に影響を与えた。ユダヤ系などの移民は、その効果で相対的に「白人」の地位を獲得したという。
 本書は、他者になりすます「擬装」を鍵に米国の音楽史を読み解く。同じ南部土着の音楽でありながら、ブルースが黒人の、カントリーが白人のものとなったのは人種別の販売戦略のせいだった。両者が融合したロックンロールの覇者E・プレスリーは「黒人のフィーリングを感じさせる白人歌手」として発掘された。白人と黒人の関係を背景に「擬装」の欲望がいかにポピュラー音楽を推進したかを論考し、刺激的な指摘に富む。(講談社選書メチエ・1890円)