「藤原彰子 天下第一の母」書評 7代の天皇にまみえたサロンの主
評者: 出口治明
/ 朝⽇新聞掲載:2018年07月14日
藤原彰子 天下第一の母 (ミネルヴァ日本評伝選)
著者:朧谷寿
出版社:ミネルヴァ書房
ジャンル:日本の小説・文学
ISBN: 9784623083626
発売⽇: 2018/05/10
サイズ: 20cm/335,9p
藤原彰子 天下第一の母 [著]朧谷寿
摂関政治の頂点を極めた藤原道長の権勢は、7代の天皇にまみえた長女、彰子(上東門院)の存在によるところが大きかった。彰子は2人の子どもと2人の孫、4人の天皇の国母として長命を保った。
一条天皇の后となった彰子は紫式部を迎え、もう一人の后、定子は清少納言を抱えたサロンで競う。彰子は、小柄ながらも鷹揚で我慢強く気配りもでき、トップとしての資質に恵まれていたようだ。紫式部は「このような方にこそお仕えすべきだ」と日記に記す。
1017年に道長は摂政を子の頼通に譲ったが、その勅答を彰子が内覧した。出家した後も彰子の権勢は揺るがない。後に頼通が関白を子の師実に譲ろうとした時、彰子は難色を示し弟の教通が関白となった。彰子は人事の決定権を握っていたのである。後の白河院政は、彰子の内覧に倣った。院政の仕組みが彰子から始まったという視点が新鮮だ。