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葉室麟さん「人受け入れる達人だった」 地元・福岡で作家仲間らがしのぶ会

穏やかな表情の遺影が花で飾られた「葉室麟さんをしのぶ会」=佐々木亮撮影

 直木賞作家で昨年12月に66歳で亡くなった葉室麟さんをしのぶ会が今月8日、地元の福岡で開かれた。同じ福岡県在住の村田喜代子さんや高樹のぶ子さんら作家仲間、デビュー前の新聞記者時代の友人、読者ら約180人が集まった。
 葉室さんはデビューこそ54歳と遅咲きだったが、『蜩(ひぐらし)ノ記』で2012年に直木賞を受賞する前後から年6~8冊ペースで作品を発表し、12年間で約60冊の小説やエッセー集を出版。没後の今年も新刊が相次いでいる。
 作家の東山彰良(あきら)さんは、西南学院大学の後輩。住まいも近く、親しく飲んだ間柄だった。最後に会った昨秋の夜、店の主人が東山さんに向けた毒舌に葉室さんが思いがけなく厳しい表情を見せたことを明かし、「失礼なことを言われて腹を立てることができなかった僕の代わりに、腹を立ててくれた。人を決して見捨てない。人を受け入れる達人だった」と振り返った。
 京都在住の作家澤田瞳子さんは、昨年夏ごろから、会う度に別れ際、握手を求められるようになったという。最近読み返した葉室さんのエッセーに、先輩作家で09年に61歳で亡くなった北重人(しげと)さんと最後に会った時に握手を交わし、その手の温(ぬく)もりを今も覚えているという文章を見つけた。「これかなと思ったんですが、残念ながらもう聞くことができません」(佐々木亮)=朝日新聞2018年10月17日掲載