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佐伯泰英さん、松任谷由実さん、菊池寛賞贈呈式で喜びの声 

菊池寛賞を受賞した佐伯泰英さん(左)、松任谷由実さん(右)

 幅広い文化活動の業績に贈られる菊池寛賞(日本文学振興会主催)の贈呈式が昨年12月、東京都内で開かれた。作家の佐伯泰英さんやシンガー・ソングライターの松任谷由実さんらが受賞の喜びを語った。

佐伯泰英さん「生前葬をやらせてもらおうと」

 佐伯さんは、「密命」シリーズに始まる「文庫書き下ろし時代小説」という新ジャンルを確立。累計発行部数は6300万部を突破し、出版界を活性化させたとして受賞した。
 佐伯さんは「賞がメディア発表になった直後のことです。ツイッターで佐伯が(競馬の)菊花賞をとったらしい、とのつぶやきがあったことを娘が教えてくれました」と話すと、会場は笑いに包まれた。賞の打診を受けた時は「私でいいのか」と迷ったという。その時、まもなく77歳になることに気づき、「この機会を逃せば、四十数年お世話になった出版界にあいさつもせずに、あの世に旅立つ。この場を借りて長年の不義理をおわびしようと考えました。お祝いの席で、語弊がある表現かもしれませんが、お別れの会、あるいは生前葬を日本文学振興会の費用でやらせてもらおうと考えたのです」と再び笑いを誘った。その後、「生き抜いてこられたのも読者の支えがあったから。これに応えるには書き続けるしかない。書き続けます」と話し、満場の拍手を浴びた。

松任谷由実さん「詠み人知らずで残るのが理想」

 松任谷さんは、高い音楽性と同時代の女性心理を巧みにすくいあげた歌詞で世代を超えて愛され、日本人の新たな心象風景を作り上げたとして受賞。「5分で味わえる短編小説を作るつもりで45年間歌を作ってきました。ノベルのお仲間に加えていただいて、心から光栄に思っています」と喜び、「私の場合、歌作りは、ある旋律にそれしかないという音律をもった言葉をのせて編んでいきます。プロットが先に浮かぶこともあります」などと、創作の手法について言及。「私が死んで、私の名前が消え去っても、私の歌だけが『詠み人知らず』として残っていくことが私の理想です。賞を励みにして、細心の注意力を働かせ、大胆なパフォーマンスを続けていきたい」と話した。(宮田裕介)=朝日新聞2019年1月30日掲載