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フルポン村上の俳句修行 歴史と伝統の「ホトトギス」句会でまさかの主役に!

文:加藤千絵、写真:斉藤順子

 年が明けて最初の句会を「初句会」と言いますが、1月22日の「若水句会」はまさに、初句会の空気に満ちていました。きちんとした服を着て、「今年もよろしくお願いします」と言葉を交わす人たち。「フルポン村上の俳句修行~わかったつもりでごめんなさい~」4回目は、そんなところにひょっこりとおじゃましました。

 句会を主宰するのは、俳句結社「ホトトギス」の稲畑廣太郎さんです。正岡子規、高浜虚子にはじまり今年で創設122年を迎えるホトトギスの主宰で、毎月20もの句会に出席すべく、全国を飛び回っています。若水句会もそんな廣太郎さんの指導句会のひとつ。この日は村上さん以外に50~80代のベテラン20人が集まりました。

手加減のない宿題に苦戦

 2001年9月に始まり、今回で212回を数える若水句会ですが、ゲストの参加は初めてとのこと。宿題で出された季語(兼題)も、寒さを避けて暖かい地方におもむく「避寒」、いい香りのする小さな黄色い花「臘梅(ろうばい)」、「ラグビー」とややマイナーな(?)印象で、手加減がありません。「今回はむずかしかったですね」という村上さんの提出句は以下の通りでした。(原文ママ)

 ・臘梅や時差ボケの夜のフィロソフィ
 ・タイ緩めつつOBのラガー来る
 ・傷はまだ熱く敗者のラガー去る
 ・避寒して村の目印おばけ岩
 ・避寒地のパンクのままの一輪車
 ・臘梅や綻んでいく茶葉の黙
(もだ)
 ・避寒宿鏡台に変色の跡

臘梅のイメージ

 持ち寄った7句をそれぞれ短冊に写し、全員分を交ぜて紙に清書します。紙に書かれた無記名の句を見ながら、特選1句を含む7句を選ぶところから句会がスタート。その後、参加者が選んだ句を発表していき、自分の句が読み上げられたら名乗ります。

 ・君が居るだけで心は避寒かな 廣太郎
 ・表戸の軽く開きたる避寒宿 滋子
 ・トライするラガー大地を傾けて 富子

 このあたりの句が5~8名の選に入り人気でしたが、村上さんの句も「タイ緩めつつOBのラガー来る」(2名)、「臘梅や時差ボケの夜のフィロソフィ」「避寒地のパンクのままの一輪車」「臘梅や綻んでいく茶葉の黙」「避寒宿鏡台に変色の跡」(各1名)が選ばれ好調です。

3句が入選、1句が準特選、そして・・・

 若水句会では最後に、廣太郎さんの「選」「準特選」「特選」「特特選」が順に発表されます。こちらも「フィロソフィ」「茶葉の黙」「変色の跡」の3句が入選。「傷はまだ熱く敗者のラガー去る」はなんと、準特選に。そしてここから、さらなる快進撃が始まります。

 特選6句が読み上げられると、「らふばいを大地てふ瓶投げ入れし 登喜子」「(ひかげ)りて臘梅の香の重くなる 富子」「果てしなく枕に沈む避寒宿 祐子」「らふばいに夕空の色加はりて 登喜子」「波音の早くものたり避寒宿 祐子」という秀句の中に「タイ緩めつつOBのラガー来る」が入りました。

廣太郎:これはラグビーの「動」じゃなくて「静」を詠んでいますね。しかもOBが後輩を激励しに試合を見に来たと思うんですけど、「タイを緩めながら」というしぐさによって何が見えるかって言うと、ラグビーをしてた人のがっしりとした首の太さ。苦しくてつい、ゆるめたという雰囲気もあってね。試合じゃなくて応援でもないラグビーを詠んだのは今日、この句だけでしょ。これはおもしろい視点かなと思いましたね。

 そしてただ1人の特特選で読み上げられたのは、「避寒地のパンクのままの一輪車」。「健志」と名乗ると、会場から思わず拍手がわき起こりました。

廣太郎:この句はすごくいろんなことが想像できてね。たぶん、お子さんが小さい頃に避寒地の別荘でずっと一輪車の練習をしているんです。乗れるようになったのか、乗れなかったのかは分かりません。それがどんどん年月が経ってきて、お子さんが成長して、ひょっとしてお嬢さんで結婚してお嫁に行っちゃったかも知れない。でもその一輪車だけは避寒地にある。それで親御さんとかほかのご家族は毎年別荘に来るんですよ。他の人だれも乗れへん。そういう一輪車がパンクしたままなんです。こういうところを見ていらっしゃる。村上さんは短歌もなさるということで、しみじみとした詩心があってね、情景をうまいこと写生されてるなと思いました。

村上:すいません、ありがとうございました。選んでいただいてよかったんですけども、今回の「避寒」も「臘梅」も「ラグビー」も僕、一度も作ったことがなくて。臘梅は知りもしなかったという感じで、花屋さんで買ってイメージをわかせて作って。避寒もラグビーもなじみがなかったんですけど、逆にそれでいっぱい想像したりとか、調べていく中で俳句を作ったので楽しかったです。

廣太郎:想像であそこまで作れるのはやっぱり詩心ですね。すばらしいです。だからこそラグビーなんかで、違う見方をされた。トライしているところじゃなくてOBが来た、という発想がいいなと思いましたね。

参加者:特特選の「パンクのままの一輪車」は実際にご覧になった?

村上:いや、一輪車自体がたまにいろんな家の駐車場とかに、全然使われてないんだろうなっていう古い感じで置いてあるのを見かけると、僕はちょっとそれに哀愁みたいなのを感じるので、避寒地という日常じゃないところにもあったら、余計そうなのかなっていうイメージです。

参加者:私はどっちかっていうと村上さんは短歌の方がいいな、と思っていつも拝見してます(笑)。短歌と俳句の調整はどうやってしていますか。

村上:僕もあんまりそこまではっきり調節してないんですけど、もともと短歌から入ったので、どっちかっていうと短歌的なショートストーリーっぽいものを作って、その中の一部分を描写するんですけども。俳句だと「季語」と「切れ」ってことを考えるようにはしてます。

参加者:俳句を作ってるときに、(短歌の)「七七」が足りないと思ったことはあります?

村上:それはいつも思ってます。それが俳句の場合は季語で省略されてるかな、と思ってます。

廣太郎:そこまで分かってらっしゃるっていうのはちょっとすごい。私もパッと感じたのは、短歌ありきやったかもしれません。短歌あってこその省略。ちょっと今日は反対に勉強させていただきましたね。

 次回のお題のひとつは特特選の人が決める、ということで「春菊」という宿題を置き土産に句会場を後にしました。

句会を終えて、廣太郎さんと村上さんが対談

――ゲストに配慮したような結果になりましたね(笑)。

廣太郎:まったく(配慮は)ないですよね。私、披講(※句を読み上げて作者が名乗る)してる間に丸付けたわけじゃなくて、披講する前ですから、全然知ってて付けたわけじゃない(笑)。いや、すばらしかったです。

村上:びっくりしました。(出句した7句中)6句選ばれたっぽいですね。

廣太郎:(選んでいない)「おばけ岩」の句もおもしろいなと思ったんですけどね。

――村上さんの俳句のどこが特によかったのでしょうか。

廣太郎:とにかく視点がちょっと違う。それに尽きますね。さっき言ったように、ラグビーのOBの句や特特選の避寒地の句がそうですよね。「臘梅や綻んでいく茶葉の黙」は、「黙(もだ)」なんて言葉がもっと練れてる人かなと思いました。「綻んでいく」より「綻んでゆく」の方がひょっとしたらいいかもしれない。「ゆく」の方がちょっと重厚になるんですね、言葉として。「避寒宿鏡台に変色の跡」はちょっとなんて言うか、ゆがんだ視点がありますね。「傷はまだ熱く敗者のラガー去る」は傷がまだ熱を持ってるっていうのがおもしろい発想だなと思って。今日は「臘梅が溶ける」っていう句がたくさんあったでしょ。でもこれからの俳句というのはもうちょっと視点を変えていきたいですよね。今日の村上さんのお句というのは、みなさまにも刺激があったような気がしますよ。

――村上さんは兼題がむずかしくて臘梅を買ったとおっしゃっていましたけど、「避寒」もなかなかなじみがなかったと思います。どうやってイメージしたんでしょうか。

村上:避寒は、寒さを避けてどこかに行くことがあったんだ、しかもそれが、今だったらハワイとかあるんでしょうけど、国内だと沖縄以外でそこまで暖かいところなんかない、それでも昔はとんでもない寒さがあったんだっていう歴史を感じましたね。現代には避寒するという行為があまりないじゃないですか。でもそのイメージを残しつつ、旅行とも移住とも違うニュアンスみたいなのがあるんだろうな、っていうところと合う言葉を選びました。

廣太郎:確かにそうですね。「避暑」の方がどちらかというとかなり違う場所に行くというイメージがあって、避寒はあんまり変わるようなところじゃないですけどもね。確かにそういう感じが俳句からも出てたんで、私もこういう発想にすごく共感したんでしょうね。

――村上さんは今月、冬休みがあったそうですが、避寒はしなかったんですか。

村上:僕はカナダに行ってたんで、めちゃめちゃ寒いところにいました。でも「臘梅や時差ボケの夜のフィロソフィ」の句はその時の本当の時差ボケです。時差ボケると真夜中でも2時間おきくらいに起きるんで、そうすると別に考えることないけど考えてる、っていうあの時間から発想しました。そこに臘梅、っていう季語を合わせて。勉強したら臘梅は香りと透けるっていうのが特徴的だってなってたんですけど、みなさんのようにそこを真正面に詠んで勝負する勇気がなかったんですよね。

廣太郎:それで今日は成功されてますよ。みなさん臘梅を想像すると、俳句の常套的な見方になってくるんですね。そういった点ではすごく一石を投じたと思いますね。

村上:僕も全然詳しくない中で参加させてもらって、いわゆる俳句に対しての王道の会っていうところで受け入れられるのかな、と思ったら選んでいただいて、すごいうれしかったです。

廣太郎:村上さんは全然むずかしい言葉を使っていらっしゃらない。俳句は言葉として平明がいいんですわね。行き着くところは平明で、余韻のあるというのが一番なんです。だからどんどん、のびのびと作っていただくのがいい。というか本当にすばらしかったですね。

村上:よかったです。緊張したので、今日。

――ホトトギスにスカウトしなくていいですか。

廣太郎:スカウトどころかぜひ来てください。インターネットで申し込みできますから。お待ちいたしております(笑)。

【修行は来月に続きます!】