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文学の魅力知ってほしい 書評や朗読、ユーチューバーら動画で配信

「文学YouTuber」のベルさん

 若い人は本を読まない――。そんな嘆きが聞こえるが、若者になじみがある動画共有サイト「ユーチューブ」を通して、文学の魅力を伝えようとする人たちがいる。
 「ごきげんよう♪ベルです」
 そんな自己紹介で始まる書評動画を発信している女性がいる。登録者数が8万人を超えるチャンネル「文学YouTuberベル【ベルりんの壁】」を持つベルさんだ。本の紹介を10分程度に分かりやすくまとめ、注目を集めている。
 ユーチューバーの活動は5年目。2年前から文学に特化すると、人気が上昇。三省堂書店やジュンク堂書店など各地の書店の本棚のプロデュースを頼まれるようにもなった。
 読書は幼いころから好きで、乙一さんや貴志祐介さんの作品をよく読んでいた。中学生時代、人間関係に悩んだ時に自分を救ってくれたのも読書だったという。
 書評動画を発信する醍醐(だいご)味は「紹介した本に共感してくれることかな」と語る。「読書が趣味だとひとに伝えると、『ありきたりだ』とか『根暗だ』というイメージを持たれることもある。そんな読書のイメージをポジティブなものにして、読書の輪を広げていければ」と話す。
 テレビの放送作家・プロデューサーを長年務めてきた河村シゲルさん(76)は、3年前に「【公式】名作朗読チャンネル Bun―Gei」を立ち上げた。漱石などの古典から現代の作家の小説を俳優が朗読し、イメージ映像をつけて演出する。作品数は100本を超えた。日本文芸家協会の協力も得て、作家の林真理子さんや山本一力さんらも出演した。

俳優と打ち合わせをする河村シゲルさん(左)
俳優と打ち合わせをする河村シゲルさん(左)

 活動の原点は、ユーチューバーなどを目指す10~20代の若者と接した際に感じた、活字離れが進んでいる危機感だった。「陳腐な言葉では、視聴者に刺さらない。本を読むことがあらゆる表現につながる」と言う。
 視力が弱って本が読みにくくなった高齢者に、音声で名作を楽しんでもらう狙いもある。「大好きな文学を、読書とは異なる新しい形で届け続けていけたら」(宮田裕介)=朝日新聞2019年9月25日掲載