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「城市郎文庫展 出版検閲とその処分」開催 発禁本にみる「表現の自由」のせめぎ合い

展示される「筆禍本」の一部

 出版検閲によって処分を受けた発禁本などを集めた展示会「城市郎文庫展 出版検閲とその処分」が、東京・お茶の水の明治大学中央図書館ギャラリーで開かれている。数々の発禁本などからは、表現の自由を巡るせめぎ合いの歴史が浮かび上がる。11月17日まで。

 展示するのは、戦前の出版検閲によって発売禁止などの処分を受けたり、非合法に流通したりした「筆禍図書・雑誌」など約70点。同館が、発禁本収集家として知られた城市郎さん(1922~2016)の蔵書を分類し、調査を進めてきた。全文削除を命じられた太宰治の小説「花火」や、永井荷風作とされる「四畳半襖(ふすま)の下張」をめぐる裁判に関する資料などをパネルの解説とともに展示する。

 展示に関わった浅岡邦雄・元中京大学教授によると、戦前は出版法や新聞紙法により、出版物は発行前に内務省への納本を義務づけられていた。検閲にあたっては、「安寧」と「風俗」の二つの大きな柱があり、天皇制や家制度などを壊すような文書は処分された。戦後は憲法21条で検閲は禁止され、表現の自由が保障されたが、わいせつ物の頒布などを処罰する刑法175条により摘発されるケースが出てきたという。

 入場無料。休館日は11月5日。問い合わせは同館(03・3296・4250)へ。(宮田裕介)=朝日新聞2019年10月30日掲載