「ザ・ソウル・オブ くず屋」書評 ゴミ問題を超えて社会が進むべき道
評者: 寺尾紗穂
/ 朝⽇新聞掲載:2019年12月07日
ザ・ソウル・オブくず屋 SDGsを実現する仕事
著者:東 龍夫
出版社:コモンズ
ジャンル:環境
ISBN: 9784861871627
発売⽇: 2019/09/28
サイズ: 19cm/201p
ザ・ソウル・オブ くず屋 SDGsを実現する仕事 [著]東龍夫
リサイクルしとけば大丈夫、と多くの人が思う。その裏側はあまり知られていない。回収されたペットボトルも、再びペットボトルになるのは25%程度で、残りは別製品となって焼却されること。アルミ缶は「電気の缶詰」といわれ、製造時に多量の電気を使うので、使用を減らした方がいいこと。ダイオキシン発生を抑える高温の焼却炉が増え、プラスチックごみも燃やせる自治体が出てきたが、高温焼却は鉛や水銀が煙として飛散しやすいという指摘があること。個人的に「プラごみ」が可燃になった時は喜んだが、限られた情報を信じていた。
読後すがすがしさが残るのは、未来と社会を慈しむ著者の思いのためだろう。資源回収業を営みながら、精神障がい者の「社会適応訓練生」を多く採用し、共同保育にも関わってきた著者が「懐かしい未来」と書くとき、ゴミ問題を超えて社会が進むべき道を示される思いがする。