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異色の民俗学者・山口弥一郎に光 消えゆく東北文化、記す 

岩手県釜石市で津波碑の調査をする山口弥一郎(1961年、福島県磐梯町蔵)

 民俗学は土地土地のありのままの姿を記録する学問だ。それを全国津々浦々で行ったのが「旅する巨人」こと、宮本常一(つねいち)(1907~81)だった。その「東北版」ともいえるのが、山口弥一郎(02~2000)だろう。民俗学者としては異色だったが、東日本大震災後、その今日的な視点への評価が高まっている。

 山口は福島県生まれ。没後、段ボール箱で44個に及ぶ資料が同県磐梯町に寄贈され、15年度から同町と県立博物館(会津若松市)が共同で整理してきた。
 同館の内山大介主任学芸員によると、山口の業績でよく知られるのが、明治三陸地震(1896年)と昭和三陸地震(1933年)の被害と集落復興をまとめた研究だという。このほか、ダムに沈む村や高速道建設で移転を余儀なくされた村、過疎で廃村になりそうな村などの消滅しつつあった民俗を、現地に住み込むなどして記録し続けた。

 内山さんは「柳田国男の弟子だった山口は、従来の民俗学が追究した何代にもわたり継続されていく文化自体に加えて、それらが時代の変化や自然の猛威で失われていくことに大きな関心と危機感を抱いていたようです」と話す。(編集委員・宮代栄一)=朝日新聞2020年3月25日掲載