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外山滋比古さん「思考の整理学」 21世紀も読まれ続ける若者の書

 7月30日に96歳で亡くなった英文学者でお茶の水女子大名誉教授の外山滋比古(とやましげひこ)さんのエッセー『思考の整理学』(ちくま文庫)は、累計253万部の大ベストセラーだ。1983年の刊行ながら、大きく部数を伸ばしたのは21世紀に入ってからだった。

 『思考の整理学』は、受動的に知識を得るだけでなく、「自分でものごとを発明、発見する」能力を身につけるよう勧める。筑摩書房によると、ビジネスマン向けの教養書シリーズの一冊として企画され、86年に文庫化。その後の21年間で16万部を売り上げた。

 しかし、爆発的ヒットになったのは2007年以降だ。その年、盛岡市の書店員が「もっと若い時に読んでいれば…」というポップを出すと、売れ行きが好調に。これを知った筑摩書房の営業担当者が全国の書店に売り込むと、08年の東京大学生協(本郷書籍部)、京都大学生協の書籍販売ランキングで1位を獲得。「東大・京大で1番読まれた本」とうたい文句を帯に入れて、さらに売り上げを伸ばす。09年に100万部、16年に200万部を超えた。

 いまだに年間平均10万部ほど重版しているといい、宣伝担当者は「大学の新入生、新入社員など、新生活を始める人が手に取ってくれる」と話している。(滝沢文那)=朝日新聞2020年8月12日掲載