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「高見順賞という奇跡」50回で幕 最後の贈呈式、歴代受賞者ら振り返る

高見順文学振興会理事長の吉増剛造さん(右)と、第50回受賞者の江代充さん

 毎年優れた詩集に贈られる高見順賞の第50回贈呈式が11月末、東京都のホテルで開かれた。式にあわせ、主催者である高見順文学振興会は、今回をもって賞を終了することを正式に決定し、発表した。戦後の日本詩壇にとって大きな存在であった賞が、半世紀にわたる歴史に幕を下ろした。

 新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、半年以上の延期を経て迎えた贈呈式には、これまでの受賞者や関係者たちが集まった。冒頭、第1回の受賞者で振興会理事長でもある吉増剛造さんが「これで終わりになるか、という不思議な哀感のようなものが浮かんできます。幅広い、底の深い方々のお力によってこの高見順賞という奇跡は成立しました」とあいさつした。

 作家の高見順(1907~65)をしのんで70年に設立された同賞は、これまでに吉増さんや佐々木幹郎さん、伊藤比呂美さんら現在の詩壇を率いる作り手を顕彰してきた。詩集『切抜帳』で最後の受賞者となった江代充さんは「受賞の知らせを受け、普段と違う感情が湧きました。感情を押しとどめるのが難しいくらい、この賞は私にとって大きい賞でした」と語った。

 財政上の理由もあり50年の区切りで役目を終えたが、新藤凉子さんや荒川洋治さんをはじめ歴代受賞者らも思い出を口にし、賞が残してきた意味の大きさを改めて印象づけた。賞を裏方として支えてきた川島かほるさんは式の最後、「高見順賞の仕事に携わった37年間はかけがえのない歳月で、とても充実していました」と万感の思いを込めて話した。(山本悠理)=朝日新聞2020年12月9日掲載