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笹公人さん「念力恋愛」インタビュー お笑い・SF・オカルト短歌から、恋愛短歌のエキスパートを目指して

構成:加藤千絵、写真:北原千恵美

(タイトルコール)「あの人~、この一冊~♪」

ニセDJ:みなさん、明けましておめでとうございます! 始まりました、「あの人、この一冊」のコーナー。令和3年、初のゲストは歌人の笹公人さんです。(パチパチ☆)

笹公人(以下、笹さん):明けましておめでとうございます。ところでDJさんは、宮沢りえさんに似てますよね? 隣に森田剛まで見えました。

ニセ宮沢:お正月からぶっとびー。それは全方位に謝りたいのですが・・・・・・(と言いつつ名乗る)。実は笹さんとは初対面ではないんですよね。ちょうど1年くらい前に、ある俳人の方の出版記念パーティーに呼んでいただきまして、そこで一人ぽつねんとしていたら、話しかけてくれた紳士が笹さんでした。結局それきりだったんですけど、ある日、本屋で『念力恋愛』という妙に引きの強い本が目に留まりまして。よく見たら、かの紳士の歌集ではないかと。

笹さん:ありがとうございます。本当にあのパーティーに行ってよかったです。

ニセ宮沢:そのときは存じ上げなかったんですが、結社「未来」の選者で、現代歌人協会の理事でいらっしゃる。そんな華麗なる笹さんの最新歌集は恋愛がテーマで、「火鍋にカツカレーぶっ込んだら天ざる」の質感を目指したということですが、もう少しご説明をお願いできますか。

笹さん:僕の短歌と水野しずさんのイラストという、一番くどいものとくどいものを交ぜて、なのに品よく収まっている、ということでしょうかね。できあがった本を見て、プロデュースしてくれた石黒謙吾さん(『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』などのヒット作がある編集者)はそういうところを目指したのかなって思いました。

最初に水野さんの絵を見たときは「大丈夫か!?」って思ったんですよ。着物姿の鬼が包丁を持ってる絵だったので・・・・・・。しかも水野さんは「ミスiD」(講談社主催のオーディション)のグランプリで、アイドルでもあるんですよね。ラフを見て、うまいのか下手なのかは分からないけど、凄いパワーと魅力を感じました。なんでここに(立川)志の輔師匠がいるのかな?とか、解釈が分からないところもあって。

でも、それがなんかおもしろいなと思ってきましてね。水野さんの絵によって、自分の殻をぶち破れるんじゃないかなって。恋愛の歌とか照れくさいので書きたくなかったんですけど、この絵と一緒なら書ける!みたいな。キザな歌とか作っても絵の方で破壊してくれますから、照れ隠しみたいなのがいらないですよね。ストレートに、今まで絶対作らなかった胸キュン短歌とか作れると思って、高校生気分で作りました。

星占いのページに見入る少女たち思われニキビにクリームのせて
青春の傷はときどき疼くからクレアラシルは捨てられずある『念力恋愛』より

ニセ宮沢:クレアラシルですね。広末ですね。

笹さん:僕もクレアラシル使ってて。ああいうのって捨てるタイミングが分からなくて、だいぶ大人になった時に、机の引き出しの隅に見つけたんですよ。

ニセ宮沢:JKのほかに、老婆になったり霊視したりタイムスリップしたり、いろんな目線で書かれた恋の歌が108首収められているんですが、笹さんは俳優でいうところの「憑依型」なんですか?

パーティーを抜け出すボンドガールほど華やいでたさと老婆は言えり
君と君の前世の村の娘ごと抱きしめている武蔵野の夜
ごろごろと石の貨幣をころがして君に届けた前前前・・・・・・世『念力恋愛』より

笹さん:よく言われます。僕は永六輔さんのモノマネもやってるんです。昨年、星野源さんが「うちで踊ろう」をやったときに、「歌人でやる奴はおらんのか」みたいなことをツイッターで呼びかけたら、俵万智さんが「まずはお前がやれ」と。それをきっかけに、「うちで六輔」っていうのを始めたんですね。

新型コロナウイルスによる自粛生活で、さぞかしお疲れのことでしょう。コロナに効くかどうかは分かりませんが、この時期は浅田飴がオススメです。(中略)遠くへ行きたい気持ちをぐーっと抑えて、おうちで浅田飴をなめているのがよろしいかと思います。さ、お待たせしました。「六輔心の短歌」のコーナーです。咳すれば人波左右に割れてゆきモーゼのように歩みゆくわれ

だから「クリエイターズ・ファイル」のロバート秋山(竜次)さんが大好きだし、やってることがすごく分かるんです。ああいうのをやってみたかったですね。別の人生があるならば。

ニセ宮沢:十分発揮されていると思いますよ。

笹さん:誰かになりきることで自分が消えるので、それが快感みたいなところは昔からありました。短歌も元々、寺山修司さんに影響されて「短歌はフィクションでもいいんだ」ってところから入ってますし。僕の短歌は最初の歌集『念力家族』にしても、架空の家族がそれぞれ超能力を持ってるっていう設定で、小説みたいな楽しみ方ができるような短歌を作ってきました。

師匠の岡井隆先生は、短歌という詩型を「作品の背後にただ一人だけの顔が見えるもの」と定義していたので、その定義を信奉している人たちからは批判されることもあったんですけど、信念を持ってやり続けていくうちに「あいつはしょうがねーか」ってなった部分もあったかもしれないですね。短歌の基本的な型は、叙景と抒情の合わせ技です。上の句の五七五で風景を描いて、七七に自分の思いや感想を述べるという。それが百人一首でも一番よく見られるスタイルですけど、そういう伝統にはちゃんと則っていると思います。

道路交通情報をはさんで、まだまだ続きます

ニセ宮沢:今回、笹さんの過去の歌集も拝読したんですが、大喜利みたいな作品もあっておもしろかったです。「あやしげな老師に催眠かけられて」「墓場から出で来しゾンビ先生は」など上の句が同じで、七七だけ変えていくっていう。

墓場から出で来しゾンビ先生の腐臭激しき夏の教室
墓場から出で来しゾンビ先生は死を自覚せずそして二学期
墓場から出で来しゾンビ先生が『ムー』(学研)の取材に応じる夕べ『念力姫』より

笹さん:「付け句」っていうんですけど、短歌を知らない人にも読みやすくしたい、っていうのがあったので初期の歌集には付けました。デビューしてからは、どうやったら短歌をエンターテインメントにできるか、っていう格闘の17年間だったかもしれないですね。

ニセ宮沢:短歌って言葉遊びなのかも、と思いつつ、第二歌集『念力図鑑』の跋文で歌人の小池光さんが書かれていた、「あかるい呪文」というのもなんだか分かるような気がして。笹さんが昨年7月に出された『念力レストラン』の中では、蟻害防止に使われていた呪い歌を紹介されていますよね。「蟻殿は虫に義の字と書きながら人の住まいにことわりもなし(作者不詳)」と書いた紙を玄関などに貼っておくと、蟻が己の行為を恥じて家に上がってこなくなるという。

笹さん:いなくなったペットが帰ってくる歌とか、防火の歌とか、眠れないときに読むといい歌とか、そういうまじない歌もあります。昔は短歌を詠んで病気を治す人もいましたしね。

短歌って言霊パワーがあると思うんです。辞世の歌を詠むとそのあとすぐ死んじゃった、って人が結構多いんですよね。後で見ると予言してる歌もあるんです。たとえばアメリカの同時多発テロ事件、ビルに飛行機が突っ込むみたいな歌を数年前に詠んでる人が2人くらいいます。ちょっとオカルトの話になっちゃうんですけど。だから僕なんかはあんまり縁起の悪いことは歌にしたくないと思ってます。短歌っていう器は不思議な力があると思うので、誹謗中傷とかきたないものは書きたくないなと思いますね。

ニセ宮沢:短歌が「あかるい呪文」だとして、『念力恋愛』を読んだらどんなことが起きそうですか?

笹さん:失恋で落ち込んでる人が読んだら、水野さんの絵との相乗効果でなんかどうでもよくなると思います(笑)。あとは癒やされたり、恋愛を楽しもうと思ったり、恋愛っていいなって思ってくれたらいいですね。短歌とか知らない女子高生が「おもしれー」って言ってくれれば成功なのかな、って気がしてますけどね。

僕は最初お笑い短歌って言われて、「SFマガジン」で連載していた頃はSF短歌って呼ばれて、「月刊ムー」で投稿コーナーを始めてからはオカルト短歌って呼ばれることが多くなって。イメージでレッテルを貼られることが多いので、今度は「恋愛の歌人」みたいに呼ばれたくてこの歌集を作りました。恋愛短歌のエキスパートみたいな(笑)。貼られるレッテルをどんどん変えていきたいですね。

(タイトルコール)「あの人~、この一冊~♪」

ニセ宮沢:笹さんの著作には「念力」というタイトルが必ず付けられていますよね。最後に、この言葉への愛着をお聞かせいただけますか?

笹さん:「念力」は語感も好きだし、イメージが形になるっていうのも念力だと思うんですよね。僕は「会いたいな」と思った人に会えちゃうんですよ。たとえばウォークマンとか聞いてると、その曲の歌手が前から歩いてきたりとか、鞄の中に入っていた本の著者とレストランで隣の席になるとか。広島の尾道に大林映画のロケ地巡りに行ったときも、偶然、大林宣彦監督に2年連続で遭遇して、のちに本をお送りしたのをきっかけに「その日のまえに」っていう映画に出させていただいたり。そんな風に導かれるようにして生まれた仕事も多いです。みんなにもそういうシンクロニシティはあると思いますけど、僕のはわかりやすいのかも。だから引き寄せ力が半端じゃないように見えるんでしょうね。

短歌の雑誌で、「超常現象」の歌だけでアンソロジーを頼まれたことがあるんです。超常現象なんて人生で一首も詠んでない歌人がほとんどなのに、28首集めなきゃいけなくて。無理難題にもほどがある、と思ったんですけど、ぱっと手にとって開いた本のページにあったりするんですよ。本棚から落ちた本のページにあったってこともありましたし。それが24回続いて、「超能力じゃん、絶対に」って怖くなっちゃって。そう思ったら、ストップしちゃったんですよ。残りの4首を探すのに3週間かかったという。念力ってそういうところあります。しらふに返ると戻っちゃう、みたいな。

ニセ宮沢:自分も笹さんの念力に引き寄せられたのかも、と思えてきました。本日は楽しいオカルト話(×)をありがとうございました(パチパチ☆)。途中でやや、キャラや設定を忘れていました。ここまでお付き合いいただいたみなさま、恋に悩んだら『念力恋愛』からお気に入りの歌を見つけてくださいね。個人的には、本に収録されている「妄想ラブレター」4作がどれも気持ち悪くてオススメです。チェキラッ!

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