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「原子力の哲学」戸谷洋志さんインタビュー 原子力に哲学はどう向き合ったのか

戸谷洋志さん

 原発や核兵器に代表される原子力という巨大テクノロジーを、ハイデガーやアーレントら7人の現代の著名な哲学者がどう考えてきたのか――。哲学・倫理学専攻の大阪大学特任助教、戸谷洋志(とやひろし)さん(32)が『原子力の哲学』(集英社新書)を出した。

 「原爆や東京電力福島第一原発事故のように原子力は大きな破局をもたらしうる。にもかかわらず人類は原子力を使い続けてきた。そうしたうかつさがどこから来るのかを問うのが原子力の哲学の大きな柱です」

 多くの哲学者が指摘するのが想像力の欠如だ。「原爆で何十万人もが死ぬ光景を人間は容易に想像できない。巨大で危険な技術を扱っているのに、その危険性を実感できない」

 科学技術の危険性に向き合い、破局を回避する方策を探るためにも、哲学的に検討し、想像力を鍛えることが必要という。市民と科学技術の問題を論じ合う「哲学対話」のワークショップも主宰する。

 「科学技術は遠い将来にまで影響を及ぼす。未来世代への責任の問題も考えていきたい」(池田洋一郎)=朝日新聞2021年2月24日掲載