「朝鮮戦争を戦った日本人」書評 平和憲法下の「戦争協力」の原型
評者: 戸邉秀明
/ 朝⽇新聞掲載:2021年02月27日
朝鮮戦争を戦った日本人
著者:藤原 和樹
出版社:NHK出版
ジャンル:歴史・地理・民俗
ISBN: 9784140818497
発売⽇: 2020/12/25
サイズ: 20cm/333p
朝鮮戦争を戦った日本人 [著]藤原和樹
「北朝鮮の人を何人殺したかわかりません」。朝鮮戦争に「参戦」した日本人が語る戦場。70年前の極秘尋問記録に残されたその肉声は、何を明かすのか。
占領米軍の基地労働者のまま海を渡った彼らは、最前線で銃を取り、応戦を余儀なくされた。開戦当初、兵員不足の穴埋めに使われ、捕虜や死者まで出る。
事実が発覚すると、米軍は尋問した上で口外を禁じた。日本政府も、占領軍には協力したが戦争参加はしていないと逃げ続けた。だが日本人の戦死の責任をもみ消す米軍に追従した経緯が、史料から露呈する。平和憲法下の「戦争協力」の原型を、著者はここに見る。
NHKの番組に基づく本書では、特攻の訓練生や戦争孤児など従軍者の数奇な前歴にも光が当てられる。なおも戦争に縛られ、彷徨(ほうこう)した末に新たな戦争へ向かった彼らだが、帰国後、警察予備隊に誘われても、誰も応募しなかったという。それが、戦場を知った者の選び取った「戦後」だった。