平野甲賀さん(ひらの・こうが=装丁家)22日、肺炎で死去、82歳。葬儀は親族で行った。喪主は妻公子(きみこ)さん。
沢木耕太郎さんの紀行小説「深夜特急」の題字など、のびやかな「描き文字」で知られ、7千冊以上の装丁を手がけた。
飾らない人柄、多くの人を引き寄せた
関わりがあった人たちから惜しむ声があがった。
平野さんは、沢木耕太郎さんの紀行小説「深夜特急」の題字などで知られる。1964年からは約30年にわたって晶文社から出版された本の装丁を一手に担い、サイのマークもデザインした。演劇との関わりも深く、「劇団黒テント」のポスター制作も続けた。
東日本大震災をきっかけに、東京から妻の公子さん(75)とともに14年に香川県・小豆島に移り住み、19年から高松市内で暮らしていた。飾らない人柄は香川でも多くの人を引き寄せた。
25年ほど前から親交のあった文筆家でイラストレーターの内澤旬子さん(54)は、夫妻と同じ2014年に小豆島に移住した。平野さんに最後に会ったのは今年2月で、自宅でパソコンを使って仕事をしていたという。内澤さんは「作品の本質を文字の形で表せるところがすごい。演劇に携わったり、展覧会を開いたり、ずっと好きなことを楽しんでやっていた。ひょうひょうとしていて、どこか不思議な部分もある人でした」と振り返った。
デザイナーの吉良幸子さん(32)も平野さんが開いた文字の教室への参加を機に昨夏、兵庫から高松に引っ越した。「のびのびとして朗らかな人柄がそのまま字に表れていた。まだ実感がわきません」と別れを惜しんだ。
朝日新聞デジタル2021年03月23日掲載