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歴史+本格「黒牢城」、ミステリー4冠 今年のランキング、人気作続編も充実

 年末の風物詩、ミステリー小説のランキングが出そろった。主なランキング(「週刊文春ミステリーベスト10」「このミステリーがすごい!」「本格ミステリ・ベスト10」「ミステリが読みたい!」)の1位はすべて米澤穂信『黒牢城』(KADOKAWA)。有岡城籠城(ろうじょう)戦を巡る荒木村重の行動の謎を、城下で続発する事件の謎に絡めながら解き明かしていく骨太な歴史ミステリーだ。今年の山田風太郎賞も受けており、幽閉中の黒田官兵衛を「安楽椅子探偵」にしたアイデアをはじめ、「史実に従ってうそをつく」山風ばりの手つきは「歴史+本格」の完璧な融合と言える。

 多くのランキングの2位に直木賞受賞作の佐藤究『テスカトリポカ』(同)が飛び込むなか、「本格」の2位は阿津川辰海『蒼海(あおみ)館の殺人』(講談社タイガ)に。山火事に襲われる『紅蓮(ぐれん)館の殺人』に続き、濁流が押し寄せる館もの。前作に増してフェアプレー精神が発揮され、二重三重に仕掛けられた伏線が回収されるさまは、本格ミステリーの醍醐(だいご)味を堪能できる。本作以外にも人気シリーズの続編の充実ぶりが目立ち、月村了衛、今村昌弘、相沢沙呼らの作品が上位にランクインした。

 本格好きの記者のベスト5もワンツーは「黒牢城」「蒼海館」。以下、岡崎琢磨『Butterfly World 最後の六日間』(双葉社)は話題のメタバースを舞台にした「SF+本格」、辻堂ゆめ『トリカゴ』(東京創元社)は無戸籍者を題材にした「社会派+本格」、そして芦沢央『神の悪手』(新潮社)は藤井聡太四冠の活躍に興味を持った人に読んでほしい将棋ものの新定番として、それぞれオススメの良作だ。=朝日新聞2021年12月15日掲載