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司馬遼太郎「胡蝶の夢」をテーマに菜の花忌シンポを開催  コロナ禍への教訓

第25回菜の花忌シンポジウムで語り合うパネリストたち

 作家・司馬遼太郎の命日にあわせて、第25回菜の花忌シンポジウムが先月12日、東京都内であった。コロナ禍のため無観客での開催となった。

 テーマは「『胡蝶(こちょう)の夢』――新型コロナ禍を考える」。国際日本文化研究センター教授の磯田道史さん、大阪警察病院院長の澤芳樹さん、作家の澤田瞳子さん、漫画家の村上もとかさんが登壇、司馬作品からコロナ禍の現代に通じる教訓を読み解いた。

 『胡蝶の夢』は司馬が1976年11月~79年1月、本紙で連載した長編小説。西洋医学を学び、幕末から明治という激動の時代を駆け抜けた3人の医者の生き様が描かれる。シンポジウムでは司会の元NHKアナウンサー古屋和雄さんが一部を朗読、討論につなげた。

 作中ではコレラの流行なども描かれる。澤さんは「私たちは最先端の医療を行っていると思っていた。ところがコロナ禍になって、病院で十分に治療ができずに患者さんが亡くなるという、あってはならないことが起きている。『胡蝶の夢』で医療の発展とともに描かれた社会や人間性は、いまに通じる」と話した。

 村上さんは「50年後、100年後にもまた同じようなことが起こるだろうと今回のコロナ禍でつくづく思い知った。社会をどう変えていくべきか、真剣に考える機会だと思うし、それを予言していたのがこの作品だったのでは」と話した。(興野優平)=朝日新聞2022年3月9日掲載