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知の世界へ誘う100ページ「現代新書100(ハンドレッド)」創刊

 知の巨人の思想に興味はあれど、なんせ現代人は忙しい。積ん読常習犯らに「読了」のカタルシスをもたらすべく、講談社現代新書から「現代新書100(ハンドレッド)」が創刊された。

 およそ10万字、224ページがセオリーとされる新書の世界で、半分の約100ページという潔さだ。シリーズ第1弾は牧野雅彦著『ハンナ・アレント』と梅田孝太著『ショーペンハウアー』の2冊。いずれも著名な思想家を取り上げ、思想の概論と時代背景、そして「なぜ、今の時代にその思想を知っておくべきか」の3点に絞って構成されている。

 SNSでは「100ページで何を語れる」と批判も出たが、あくまで入門書。「もっと大きな知の世界はもちろんある」と青木肇編集長は強調する。新書のメイン読者層を50~60代男性が占める中で若者にも届けようと、電子版は499円に抑えた。「高度な」教養書や学術書を手に取るきっかけになればと言う。

 執筆経験の浅い気鋭の研究者や、複数の締め切りを抱える重鎮にも、100ページなら声をかけやすい。著者の発掘や若手編集者の修業の場、従来の新書より早く時事ネタを出版できる即時性にも可能性を見る。
 宣伝文句は「すぐ読めて、おもしろくて、ためになる」。3点のバランスをギリギリで攻める。(田中ゑれ奈)=朝日新聞2022年10月1日掲載