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「アザラシ語入門」書評 研究者が身近になる動物記

評者: 石原安野 / 朝⽇新聞掲載:2022年12月17日
アザラシ語入門 水中のふしぎな音に耳を澄ませて (新・動物記) 著者:水口 大輔 出版社:京都大学学術出版会 ジャンル:動物学

ISBN: 9784814004393
発売⽇: 2022/10/17
サイズ: 19cm/207p

「アザラシ語入門」 [著]水口大輔

 人見知りの高校生が動物について研究したいと大学に入学したところ、そこにあったのは昆虫やダニの研究室。そんな中、こんな世界もあるんだよ、と新しい知の景色をひょいっと見せてくれる先生達(たち)との出会いを通し、アザラシ研究への道を切り拓(ひら)く。
 アザラシの声は海にマイクを沈めると聴こえる。しかし、広く暗い海の中でその声の主を直接観察することは大変難しい。よって、アザラシがどんな時に何を意図して声を出しているのかは長い間、謎のままだ。
 極寒のおたる水族館の屋外水槽で震え、カタコト英語での海外トレーニングでは「ノー」を言う大切さを学ぶ。喧嘩(けんか)っ早いワモンアザラシ、のんびり屋のアゴヒゲアザラシに、接触を嫌うクラカケアザラシ。個性的な野生動物の行動を観察者の主観が入らないように記録するのは難しい。
 大御所研究者による解説書とは一味違う動物記は、研究者が身近になる研究への入門書にもなっている。