まあ我々人間が住むことはない。サイズ的に入らないし、そもそも招待されないと思う。でも、著者は別かもしれない。どうぞ鈴木さん、あなたならいいよ、いらっしゃい、と、モグラやツチブタ、魚や鳥、プレーリードッグやワニなど、いろんな生き物から誘われたにちがいない、なんて、そんな想像をしてしまうほど、動物たちのプライベートな空間を観察し、スケッチしたのが本書だ。嘴(くちばし)で葉に穴を開け、クモの糸を使い、縫い合わせる鳥。キノコを巣で栽培するアリ。捕獲した生き物を家にしてしまうオオタルマワシ。葉っぱを柔らかくしてベッドを作るチンパンジー。過酷な環境のはずなのに、生活をエンジョイしているように思えてくる。
基本、見開きの左下に一文が添えられて、それがリズムを刻み、次のページに読者を誘う。リズムだけじゃない。次のページには違う動物の巣が待っている。水の中や木の上など、現実ではおそらく出会わない動物どうしが、その左下の一文が導く「巣」の類似点によって、繋(つな)がってしまうのだ。鳥の巣研究家にして絵本作家でもある著者らしい仕掛け。物語に頼ることなく、生き物たちがお隣さんになってしまうフシギ。=朝日新聞2023年9月2日掲載