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本屋大賞、翻訳小説部門に「ようこそ、ヒュナム洞書店へ」発掘部門は「プラスティック」 

ファン・ボルムさん(左)と井上夢人さん

 10日に発表された本屋大賞では、大賞作「成瀬は天下を取りにいく」のほか、翻訳小説部門と、2022年11月以前に刊行された作品を対象にした発掘部門が選ばれた。

 翻訳部門は「ようこそ、ヒュナム洞書店へ」(ファン・ボルム著、牧野美加訳、集英社)に。発表会にはファンさんと牧野さんが共に韓国から出席した。

 ファンさんは執筆中に日本の映画からインスピレーションを受けていたことを明かし、日本の読者が親しみを持って読んでくれたことを喜んだ。

 「この小説を読まれた方は登場人物を応援したくなるそうです。そして登場人物を応援しているまなざしを自分に向けると、自分自身のことを応援したくなると。つらい世の中ですが、自分を応援し、他の人たちと応援しあえるような時間が増えればいいと思います。この賞は私にとって、とても大きな応援になりました」と謝辞を述べた。

 発掘部門はミステリー作家の井上夢人(ゆめひと)さんが1993年に発表した「プラスティック」(講談社文庫)。推薦者として、大阪府豊中市で調剤薬局と本屋を並業するページ薬局に勤める薬剤師の尼子慎太さんが、来場者に語りかけた。

 「タイトルだけでは内容が気になりませんか。読み出すと謎が謎を呼ぶ展開が続き、やめどきがわからないくらい熱中してしまって、気づけば朝になっておりました。それくらい面白い。何も知らない状態で手にとっていただきたい」と話し、三つのオススメポイントをあげた。

  • 31年前の作品で、フロッピーディスクやワープロという単語が並ぶが、意味がわからない若い人でも安心して手にとってほしい。
  • とにかく読みやすい。冒頭だけでも立ち読みすれば、レジにそのままいってしまうことになる。
  • 小説でしか体験できない衝撃がある。

 続いて作者の井上さんが壇に上がり、あいさつした。

 「小説家は自分の書いた本が、少しでも多くの方に読んでいただけることを希望しておりますし、同時になるべく長く読み継がれることを考えている。でも、そうは問屋がおろさない。せっかく本にしていただいても、1カ月2カ月たつと、すーっと消えていってしまう。作者には何のことわりもなく。今回、陽(ひ)にあたるチャンスを与えていただいたのはこのうえない喜びです」 (野波健祐)=朝日新聞2024年4月17日掲載