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累計250万部「おしいれのぼうけん」出版50年 「将来は働く女性が増える」物語の舞台は保育園に

 人気絵本「おしいれのぼうけん」が11月に出版から50年を迎える。担当編集者を務めた童心社会長の酒井京子さん(78)が7月25日に東京都内で講演し、作品が生まれた背景を語った。

 物語の舞台は保育園。昼寝の前、けんかをして先生に怒られた男の子2人が押し入れに閉じ込められるが、真っ暗闇の中では協力して「ねずみばあさん」に立ち向かう。児童文学作家の古田足日(たるひ)さんが文、絵本作家の田畑精一さんが絵を手がけ、1974年に刊行した。酒井さんは入社4年目で担当になった。

 古田さんは当時、将来は子育てをしながら働く女性が増えると考え、舞台を保育園に設定。ある保育園を取材したところ、悪いことをした子どもを押し入れに入れると、泣き出して観念する子が多い一方、あせもが出来るほど中で抵抗する子もいるというエピソードを聞いた。それが作品の元になった。「古田さんはそこまで頑張った子がいたことにいたく感動していた」

 80ページほどの大作だが、これまでに250万部が発行された。酒井さんは「この本は完成した途端、私の手を離れて社会的な存在になっていった。作家や画家の自己表現にとどまらず、読者の心を激しく揺さぶることができたと思う。そういう本を作る覚悟が今こそ必要です」と語りかけた。(伊藤宏樹)=朝日新聞2024年8月31日掲載