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「性差の日本史」にみる歴史学の可能性 国際女性史連盟の大会、日本初開催

基調講演をする横山百合子さん

 各国の女性史研究者が参加する国際女性史連盟(高橋裕子会長)の大会が8月、東京都渋谷区の津田塾大学で開かれた。39カ国、約260人の研究者らが参加した。大会は3年に1度ほど開かれており、日本での開催は初めて。

 今大会のテーマは「女性史における主な課題を振り返る」。女性の権利尊重に対する「保守的反動」が世界で広がるなか、女性の政治参画、性別役割分業、セクシュアリティーといった論点が歴史的にどのように理解されてきたかを検証しようと、参加者は研究成果を披露しあった。

 基調講演では、国立歴史民俗博物館(歴博)名誉教授の横山百合子さん(日本近世史)、上智大学名誉教授のリンダ・グローブさん(中国史)、甲南大学教授の井野瀬久美恵さん(西洋史)がそれぞれ講演した。

 横山さんは、2020年に歴博で話題になった企画展「性差(ジェンダー)の日本史」を題材に、ジェンダー研究における歴史学の可能性について発表した。

 これまでの研究組織は男性中心だったと指摘したうえで、生活用具や録音した音声などの資料について、ジェンダーの視点をもって検証することで初めて見えてくる歴史的、社会的な課題があるとし、「世界の博物館に眠る資料は、ジェンダーの光が当たることを待っている」とスピーチした。

 ジェンダー平等への道はまだ途上にある。高橋会長は、歴史的な経緯を学ぶことが公正な未来を作る推進力になると述べ、今大会について、「女性史研究が盛んな米国をはじめ、各国の研究成果が発表され、活発な議論が行われた。参加者は力づけられたのではないか。世界には異なる課題があるので、研究者同士が連帯することで、各地での研究もより進んでいくだろう」と振り返った。(真田香菜子)=朝日新聞2024年9月11日掲載