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映画「傲慢と善良」舞台挨拶 藤ヶ谷太輔さん・奈緒さん「夢がかなった」(プレミア詳報)

(左から)萩原健太郎監督、倉悠貴さん、奈緒さん、藤ヶ谷太輔さん、桜庭ななみさん、辻村深月さん=junko撮影

サプライズに奈緒さん大感激

 舞台挨拶の冒頭、客席中央の両扉から架役の藤ヶ谷太輔さんと、真美役の奈緒さんが登場。会場が歓声に包まれる中、藤ヶ谷さんがサプライズで白い薔薇の花束を差し出し「架から真実への気持ちと、大切な作品を一緒に作れてすごく嬉しかったという僕からの感謝の気持ちです」と伝えると、奈緒さんが「聞いてない! うれしい、ありがとうございます」と大感激。映画のワンシーンを見ているようなオープニングとなりました。

 はじめに、藤ヶ谷さんが「今、この瞬間、夢が形になるので、ドキドキふわふわしていますけど、嬉しい気持ちでいっぱいです」と挨拶。奈緒さんは「この仕事を始めたときから、辻村さんの作品に出演したいというのが夢だったので、夢が叶ってうれしいです。みなさんに初めて観ていただけることが、朝起きたときから幸せでした」と話しました。

 真美が出会う、災害ボランティアのリーダー・高橋を演じた倉悠貴さんは「この映画は、自分にとって教訓のような大切な作品。みなさんが映画を見てどんなことを思うのかすごく楽しみにしています」。架の友人・美奈子役の桜庭みなみさんは、「作品を観て、不器用な架と真実がまっすぐに進む姿にキュンとしました。私も大好きな映画となりました」と思いを語りました。

 萩原健太郎監督は「ようやくみなさんに、藤ヶ谷さんが演じた架、奈緒さんが演じた真実の姿を観ていただける日がきたことをすごく嬉しく思っています」。原作者の辻村深月さんが「監督をはじめ、キャスト、スタッフのみなさん、私が観たかった作品を作ってくださって、本当にありがとうございます。原作は、かなり言葉を尽くして書いた小説です。架と真実の痛い部分やカッコ悪い部分を全部入れてくださって、原作のファンの方たちもこれが観たかったと思っていただける作品になっていると思います」と述べると、藤ヶ谷さんは「うれしいなぁ」と、喜びを噛み締めていました。

「みんなの価値観を共有」

 「人生で一番刺さった作品」と言うほど、原作の大ファンだという藤ヶ谷さん。自身の出演について「作品への思いを言葉にすることで形になっていったことがすごく嬉しかったです。原作の香りは残したい、でも映画ならではの良さも絶対に入れなくてはいけないと思って、監督や奈緒さんと話し合いをしながら、みんなで作っていきました」と振り返りました。

 奈緒さんも辻村作品の大ファン。真美を演じる上で大事にしたのは「傲慢」と「善良」というふたつの言葉といい「一つの物事をどちらかの言葉で決定づけないように意識しました。一緒に作るみんなの価値観とか、いろんなものを共有し、たくさん話しました。話せば話すほど、傲慢と善良の間で揺れ動くことができて、クランクアップの瞬間まで、その感じを大事に追いかけていました」と回想しました。

 撮影前に、藤ヶ谷さんと奈緒さん、監督と3人で話したエピソードも披露されました。藤ヶ谷さんが「食事をしながら、自然と自分にとって愛とはなにか、人に優しくするとはどういうことなのかという話にもなって、今思うと、結構はずかしいことも言っていたような。でもそれが作品に生かされたんじゃないかと思います」と述べ、奈緒さんも「“語る”という感じになってましたよね(笑)。監督の夫婦関係の話を聞いて、すごくうらやましいなと思ったのを覚えています。そういう監督がこの作品を撮るんだって思うと信頼できたし、すごく楽しみになりました」と振り返っていました。

あるシーンで流れた「地獄の空気感」

 桜庭さん演じる美奈子は、友だち思いの一面もある一方、辛辣でドキッとする発言も多い役。「真美にとってめっちゃイヤな奴だと思うんですけど、友だち思いで、まっすぐ突き進んでしまう姿が善良でも傲慢でもあって、まさに両方兼ね備えた役で、演じていて楽しかったです」という桜庭さんに、藤ヶ谷さんは「美奈子と真美が出会うシーンは、地獄のような空気が流れていましたね。架はそれすらも気づかないんですけど、でも、その地獄の空気感は好きでしたね」と、緊張感ある現場の雰囲気を伝えてくれました。

 100万部を突破したベストセラー小説を映画化することに、プレッシャーはなかったかと聞かれた萩原監督は「ありましたけど、やれることをやるしかないという気持ちでやりました。映画だからこそできる表現を入れていく、原作を大切にしつつ、『実写化』ではなく、『映画』として作りたかったという思いが強くありました」と思いを述べました。

辻村さん「汲み取れるチームにお預けできた」

 辻村さんは「本作は、スタッフやキャストが決まるたびに、構成案とか脚本がよくなっていきました。清水友佳子さんが脚本を書いてきてくださったときに、冒頭に原作にはないセリフがあって、その一言を見たときに、原作にあるしんどさとか、そういうものを汲み取れるチームにお預けできたんだなと思いました。現場でもたくさん話し合ってくださって、男性と女性で解釈が違うことがあったとか、一つの作品を愛して、一緒に作ってくださったという感じがあるので、私がリクエストを出すまでもなく、みなさんのリクエストを監督が叶えてくださった結果が形になったものだと思っています」と話しました。

 映画が「一生に一度の選択」を描いていることにちなみ、一生に一度の選択について聞かれた藤ヶ谷さんは「劇中で架がつけている腕時計を買いました。自分にとってものすごく大切な作品なので、架として過ごしていたものを買おうと思って。今日もつけてきました。お守りのような感覚ですね」と、腕時計を披露。辻村さんに「そんなに思い入れを持って演じてもらえて、著者としてすごくうれしいし、ほんとに書いてよかったなと思いました」と言われると、「え! すごい! 書いてよかっただなんて! すごくないですか? 記者のみなさん、ここ、太字でお願いします!」と喜んでいました。

 最後に、奈緒さんが「ふたりの男女が一生に一度の選択をします。一生に一度の選択をしたことがある方も、これからする方も、その選択にたどり着くまでは、小さな選択の連続だと思います。その小さな選択の連続を心から応援したいと思う人たちが作ったこの映画を、自信を持ってお届けします。最後まで見守っていただけるとうれしいです」。藤ヶ谷さんは「とにかく原作が素晴らしくて、この映画も素晴らしいと、自信を持ってみなさまにお届けできる作品になりました。自分の夢でもありましたし、自分の代表作になったらいいなと思っています。刺さるシーン、刺さる言葉がたくさんあると思います。映画を観てくださった方の人生の中に刺さる1本になったら嬉しいなと思っています」とイベントを締めくくり、観客からあたたかな拍手が送られました。