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映画「はたらく細胞」山本耕史さん・仲里依紗さんインタビュー 体内世界を描く「発明的な作品」

仲里依紗さん(左)と山本耕史さん=junko撮影

(C)清水茜/講談社 (C)原田重光・初嘉屋一生・清水茜/講談社 (C)2024映画「はたらく細胞」製作委員会

この作品だからできる世界観

——最初に映画化と役のオファーを聞いた時、お二人はどう思いましたか?

山本耕史(以下、山本): 僕は今回のお話を聞いてから『はたらく細胞』のことを知りました。それから子どもと一緒にアニメも見たのですが、体の中のことを楽しく学びながら、それぞれの細胞の個性をちゃんと理解しながら見られる作品だなと思いました。

 原作には外側(人間)が全く出てこないじゃないですか。だけど、今回の映画では(芦田)愛菜ちゃんと(阿部)サダヲさん演じる親子も出てくるところが特徴だと思うんですよね。全く違う映画を見ているような感じなんだけど、この作品だからこそできる世界観なんだなと思いました。カラフルでポップなものが出来上がるなと、演じながら想像していました。

仲里依紗(以下、仲):  私も僭越ながらお話を頂いて初めてこの作品を知ったのですが、ママ友や周りの人たちから「『はたらく細胞』に出るの?すごい!」と言われたんです。そんなに人気がある作品に出られて嬉しいという思いが、後からじわじわときました。

 自分の役はどんな感じなのかなと思ったら、こんなにかっこいい役だとは! 最初はこんなにもアクションがあるとは思っていなかったしとても不安でしたが、何度も練習を重ねて、日々筋肉痛と闘いながらなんとかやりきりましたね。

 

——本作のどんなところに魅力や面白さを感じますか。

山本:単純にファンタジーとしても見られるし、大人や細胞のことを勉強したい人は知識として学べますよね。それに、子どもたちに体のことをさりげなく教えてあげられる作品というのは、なかなかの発明だと思うんですよ。やっぱり「勉強」って言われると嫌々になってしまうし退屈なこともあるけど、こういう形で知らない間に学べる作品はあまりないと思います。

 興味の入り口は「白血球かっこいい」でもいいし「赤血球ってすごく頑張っているんだな」でいいんですよ。僕は親として、子どもたちがすんなりと知っておいて損はないこの世界観に触れられるというのは、とてもいいことだと思います。それに、体の中はみんな一緒だから世界中どこでも通用するじゃないですか。日本にとどまらない作品でもあると思います。

仲:山本さんがおっしゃることももちろんですし、見ている子どもたちが、実際に自分の体の中でもこんな仕組みがあるんだと理解できる手掛かりの一つとして、阿部さんと愛菜ちゃんが演じる親子の人間模様が素敵だなと。よりリアルに感じられる気がします。

いい意味で考えすぎず、テンポを大切に

——山本さんが演じるのは、細菌やウイルス感染細胞などの異物を見つけ破壊する、強力な殺傷能力を持つ免疫細胞の主力部隊「キラーT細胞」。仲さんが演じたのは、細菌やウイルス感染細胞などの異物を見つけ次第、単独で攻撃の先陣を切る「NK細胞」です。演じるうえで心がけたことはありますか。

山本:自分の役が割と勢いのある、体格のいいキャラクターだったので「なるほどな」と思いました(笑)。とにかく体を鍛えて体形をキープしなければいけない役でしたので、あまり難しいことはなかったといいますか。「これをやりながらあっちに気が向いている」といった繊細な芝居をよく求められるんだけど、今回はいい意味であまり考えずに、ひとつの細胞としての役柄を突き通せばいいと思っていました。

仲:武内(英樹)監督から言われたのが「テンポさえ上げてもらえればいいので、セリフを1.5倍速くらいで考えてもらえれば大丈夫です」ということでした。その「1.5倍速で」がすごく分かりやすくて、台本を読むと1.5倍速の方が絶対に見やすいし、細胞らしいので「そういうテンポがいいんだな。そのおかげで見やすくなるんだな」と心がけていました。

 

——個性豊かでキャラ強めな細胞たちが出ていますが、ご自身が演じた細胞以外で、印象に残っている細胞は?

山本:「マクロファージ」(松本若菜)はすごくかっこいい役どころだったな。あとは加藤(諒)くんと板垣(李光人)くんの先輩新米赤血球コンビも、同じ細胞なのにこんなにやることが違うんだなとおもしろかったです。

仲:私、もし次があれば片岡(愛之助)さんが演じた「肺炎球菌」のキャラクターをやりたいですね。だってこの衣装、すごいじゃないですか。まずこの衣装を着たい!って思うし、どこか「悪」に憧れているところがあるんですよ。こういう作品でいろいろなことをやってみたいなと思います。

それぞれの子どもの反応は?

——完成した映画をお子さんが見たら、どんな反応をすると思いますか?

仲: ファンタジー要素もありながら、笑えるところもあるのがこの作品のおもしろいところだし、子どもって肛門とかうんちというワードが大好きじゃないですか(笑)。なので、きっと「自分の体は今、こうなっている!」とはしゃぎそうです。私が演じたNK細胞は一匹狼なので、そういうところも好きそうですね。かっこいいキャラを演じられたので、早く一緒に見に行きたいです。

山本:最近も、僕がちょっと風邪をひくと「今、パパ(キラーT細胞)が体の中で戦っているんでしょ? じゃあ、パパが2人いるじゃん」といった話をしているので、なんとなく僕がやっている役は体の中で戦っている、ということを理解しているみたいです。

 僕は子どもにこの作品から何かを学んでほしいというより、ひとつのきっかけとして、頭の片隅に「白血球と赤血球ってこういう働きをしているんだな」くらいに思っていてくれたらいいと思います。誰も教えなくても知識が入るのはいいことだし、誰かが教えたわけでもないことって絶対に忘れないですから。そういう意味でも非常に画期的で発明的な作品だなと思います。

 

免疫細胞役を演じて初めて知ったこと

——お二人は以前、ドラマ「大奥」でも共演しましたが、今回の撮影時の思い出や印象に残っていることを教えてください。

山本:「大奥」で里依紗ちゃんが演じた五代将軍綱吉と、僕が演じた右衛門佐はなんだかんだ言いあって、ケンカをしながらもずっと一緒にいるような関係だったので、ある意味近い役柄だったよね。でも、今回はお互い、立ち回り(戦いのお芝居)には苦労しました。

仲:本当に大変でしたね。私は武器があるけど山本さんは素手だから、その分ケガもありそうでしたよね。

山本:キラーT細胞って、殴ったり何かを持ち上げて投げたりという立ち回りなので、ぶんぶん腕を振り回しながらアクションするんです。ある日、何にもぶつけていないのに腕がパンパンに腫れてきたんですが、強く腕を振り回した遠心力で血がガッと流れるらしいんです。コントロールしながら振らないと危ないんだなと、この役を通して勉強になりました。 

——今回は漫画が原作でしたが、お二人はふだん、どんなジャンルのエンタメを見ることが多いですか。

仲:映画の「キングダム」が好きで、全シリーズ見ました。山本さんは3作目の「運命の炎」から出ているじゃないですか。私、「いつかキングダムに出たい」と、ずっと言い続けているんですけど、私の旦那(中尾明慶)が原作好きでよく見ているので「何か私にできそうで残っている役はない?」って聞いたら「悪役だったらあるかも」って言われて。山本さんもちょっと悪い役で出ていたから、その補佐あたりで出られないかしらと、ちょっと期待しているんです(笑)。

山本:僕はホラー映画が好きで、特にゾンビ映画が大好きなんです。

仲:意外~! 私もゾンビ映画大好きで、それにもずっと「出たい」って言っているんですよ。

山本:『ウォーキング・デッド』も好きですし、むしろゾンビものしか見ないかもしれない。いわゆる人間ドラマみたいなものはあまり見なくて、ハラハラドキドキするのが好きなんです。

仲:私も同じです。何か巻き起こってほしいんですよね。

——例えば「ドキドキ」や「ハラハラ」はミステリーなどにもありますが、ゾンビ映画だからこその面白さをどんなところに感じるのでしょうか。

山本:ミステリーは割と精神的なものでもあるけど、ゾンビものは腸が出てきたりして、直接的なんですよね。僕はゾンビ映画を見すぎているので、大体の展開が分かるんですよ。「あ、この人次に死ぬ」というフラグが立つんだよね。

仲:出てきた瞬間に分かりますよね。あと「この人今いいこと言っているから、もうすぐ死ぬんだろうな」とか(笑)。

山本:その先を読めてしまうけど、やっぱり見ていて楽しいんですよ。きっと、僕らに共通しているのは「これはできないだろうな、あり得ないだろうな」と思う方が、エンターテイナーとしては見たいし、やりたい、関わりたいと思うところなんじゃないかな。普通の人間をやるよりも、ありえないバケモノの方が自由度があるので、俳優としての醍醐味かなと思います。