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精神分析の歴史ひもとく「無意識の発見」 中村佑子の新書速報!

  1. 『無意識の発見 心に挑んだ精神分析の歴史』 工藤顕太著 講談社現代新書 1210円
  2. 『姥棄て考 老いの場所をさがして』 赤坂憲雄著 岩波新書 1056円

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 (1)は、精神分析が問うてきた、私たちが望むもの=欲望を対象化する。精神分析は分派が多く総覧しにくいし、創始者フロイトの「ペニス羨望(せんぼう)」等は、男性優位の論理だと疑義を呈する議論も多い。本書はまずフロイト個人にフォーカスし、その理由は彼の母親像にありとし、女性理解の揺らぎがあると腑(ふ)に落ちた。フロイトの穴を埋めたのが「異端」の後進たち。M・クラインからラカンまで、著者は要点をぐっと摑(つか)んでいく。とりわけ心動かされたのは、ビオンの「思考」。個人が思考する手前に共同的経験としての思考があるという。ラカンにおける言語、ユングの集合的無意識もだが、患者の疾患を二者関係で捉えたところから客観的で共同的な地平へとシフトさせた。フロイトが撒(ま)いた種が、個人から普遍へと咲き乱れるさまを次々見せられ、頁(ページ)を繰る手が止まらなかった。

 (2)は、「家族とは性と食と労働をめぐる最小限の再生産の現場」と看破する著者が、棄老=姥棄(うばす)て、尊厳死と、老年の生について物語と現実を行き来しながら思考する。著者の興味は広範で、深沢七郎『楢山節考』はもちろん、映画「PLAN 75」からカズオ・イシグロ『わたしを離さないで』まで微細な読み解きを堪能した。執筆の一つの動機は老人の「集団自決」を推奨した経済学者への強い疑義。老人が穏やかに「降りる」時代は終わったが、現代の老人に居場所がある訳ではない。柔らかな隠居をすすめる結語に解放感を覚えた。=朝日新聞2026年9月19日掲載