ISBN: 9784768459959
発売⽇: 2026/07/22
サイズ: 12.8×18.8cm/200p
「とにかく、デモ!」 [著]チョン・ボラ
少し前から、国会前をはじめ各地の路上で市民によるデモが盛んになっている。そこでは、K―POPが鳴り響き、参加者がペンライトを揺らして、コールを発する。これらは、韓国のデモ文化がメディアやSNSを通じて日本の路上に伝播(でんぱ)したといわれている。
本書は、その韓国におけるデモをはじめとする路上アクションへの参加の記録だ。著者は世界的に知られるSF作家。路上の民主主義が活発な韓国らしく、著者が参加する行動も、セウォル号沈没にたいする真相究明を求めるデモから労働運動、フェミニズム運動、ガザ地区虐殺反対集会まで幅広い。フットワーク軽く、勤務後に路上に向かい、五体投地も行う。
さらに、事故の被害者の親や、その場で友人に電話をかけ署名集めに協力する無名の市民、高空籠城(ろうじょう)(一定期間、高い場所に籠城する抗議)する活動家など、そこに集う人びとと、運動への多様な関わり方も印象的だ。
著者にとって、こうしたアクションへの参加は日常そのものだ。その背景には、ユートピアが簡単には実現しないことを承知の上で、「よりよい世の中に向かう道の、せめて半分の半分でも進むこと」が重要だと考える著者の信念がある。同時に、闘いは、困難に直面している「同志」とつながり、かれらの願いや、かれらにたいする為政者の対応を直(じか)に知る学びの場でもあるという。
著者をはじめ、韓国の人びとの日常に根づいた民主主義の土台には、やはり軍事政権と対峙(たいじ)し、市民の力で民主主義を勝ち取った歴史があるように思う。その歴史が、自分が動けば社会は変わるという確信を生み出し、人びとは「せめて半分の半分でも進」めるようにと、闘いや連帯を求めて路上に繰り出す。そのスピリットと文化は今、日本の国会前にも伝わり、冷笑的になりがちな、この社会を変えようとする人びとに力を焚(く)べている。そう、諦めている場合ではないのだ。
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Chung Bora 1976年生まれ。韓国のSF作家、翻訳家。『呪いのウサギ』の英語版で国際ブッカー賞の最終候補に。
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吉良佳奈江訳