【翻訳家・さくまゆみこさんのおすすめ】
「宇宙人のいる教室」
舞台は架空の時代の地球。その頃はさまざまな星に宇宙人がいて、「レベルの高い宇宙戦争」に明け暮れている。一方、地球は「平和の星」と呼ばれ、戦禍に脅かされる子どもたちの避難先として20もの星から疎開児童を受け入れている(皮肉たっぷりですね!)。
ある日、5年生の美月のクラスにも宇宙人がやってきた。黄緑色の髪と深緑色の目をもち、腕は4本。足がめちゃめちゃ速いし顕微鏡なみに目がいい。日本語がおぼつかないこの宇宙人(自称パー子)のお世話係に任命された美月は、違和感を抑えて友だちになろうと努めるが、クラスメートは、パー子をキモいと思ったり、ちやほやしたり、距離をおいたりとさまざまだ。街に出れば、テレビやネットの情報を鵜呑(うの)みにして敵意丸出しでからんでくる人も。
思いがけない設定やストーリー展開を楽しみながら、スラスラ読めるエンタメ作品。でも、この奇想天外な物語世界は、実は、私たちの身の回りにある、異文化の受容や差別についてより深く考えるための仕掛けなのかもしれませんね。
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長谷川まりる作、岩崎書店、1650円、小学校高学年から
【絵本評論家・広松由希子さんのおすすめ】
「落語絵本 死神」
うだつの上がらぬ男の元に、死神がニセ医者になる術(すべ)を授けにくる。病床の枕元に死神がいれば寿命だが、足元にいる死神は呪文を唱えれば消えるという。男はたちまち名医と評判になり、ボロ儲(もう)け。だが金に目が眩(くら)み、自分の首を絞める羽目に?
元はグリム童話の翻案という古典落語の怪談噺(ばなし)を絵本化。噺家によってオチが異なるが、柳家小三治版を採用。背筋ヒヤリのブラックな笑いの余韻まで、32ページにピタリと収めた職人技だ。死神の風貌(ふうぼう)や左前の装束、裏表紙の小道具……隅々まで堪能して。
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川端誠(まこと)作、ロクリン社、1870円、6歳から
【ちいさいおうち書店店長・越高一夫さんのおすすめ】
「パレスチナの羊飼い」
パレスチナの少女アマニは千年以上続く羊飼いの家に生まれた。女の子は羊飼いになれないという慣習があったにもかかわらず、祖父はアマニを山へ連れて行き羊と共に生きる術を教えてくれた。羊飼いになろうと決めたアマニは、イスラエルによる入植で羊を放牧する土地が狭められていく中でも、羊たちを守ろうと決意するが……。
パレスチナ人とイスラエル人の紛争の問題を新しい視点で描いた物語。厳しい状況の中でもひたむきに生きようとする少女の姿に胸が打たれる。
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アン・ローレル・カーター著、櫛田理絵訳、あすなろ書房、1980円、中学生から
=朝日新聞2026年9月26日掲載