スウェーデン・アカデミーは8日、2026年のノーベル文学賞をカナダの詩人・作家のアン・カーソンさん(76)に授与すると発表した。授賞理由は「古典の伝統との遊び心あふれる対話を通じた、大胆かつ独創的な作品群は、現代文学に新たな形式を生み出した」としている。カナダの作家の受賞は13年のアリス・マンロー以来。
1950年、トロント生まれ。高校時代のラテン語教師の導きで古代ギリシャ語を学び、ギリシャ古典文学に傾倒する。81年、トロント大で古典学の博士号を取得した。
随想集「Eros the Bittersweet」(86年)の刊行後、87年に長編詩「Kinds of Water」で詩人としてデビュー。ギリシャ古典を下敷きにしたパスティーシュ(模倣)の名手として注目された。98年の「赤の自伝」は詩と小説を融合した作品で、異例のベストセラーに。01年には短編詩集「Men in the Off Hours」でカナダのグリフィン詩賞を受賞。同年、英国の有名詩人にちなんだT・S・エリオット賞を受けた。24年の詩集「かみあわないノーマ」で全米批評家協会賞を受賞している。
古代ギリシャ詩人サッフォーやエウリピデスなど古典の翻訳家としても知られている。
「かみあわないノーマ」の邦訳書(小磯洋光さん訳)は今年出版された。企画編集した詩人の青柳菜摘さんは、「古代ギリシャをはじめとした古典学者でもあり、積み重なる歴史の研究が詩にもよく表れている。一方で、生活と地続きである今の時代を重要に思っていることも詩を読むことで分かってくる。様々な形式を用いて世界中で起こっている問題を読者に届けている。彼女の詩集は、長く後世に残っていく『書物』だと思う。受賞は、同じ表現者としてもうれしい」と話した。
賞金は1200万スウェーデンクローナ(約1億8900万円)。授賞式は12月10日、スウェーデンの首都ストックホルムで開かれる。
(ロンドン=荒ちひろ、野波健祐)朝日新聞デジタル2026年10月08日掲載