ISBN: 9784488004019
発売⽇: 2026/07/30
サイズ: 13.4×19.4cm/386p
「恐竜発見」 [著]エドワード・ドルニック
一九世紀イギリスを舞台にした恐竜発見の歴史。そう聞くと、血湧き肉躍る痛快アドベンチャーを期待したくなるけれど、読者はそれとは別の仕方でワクワクさせられることになる。本書で語られるのは、実は恐竜発見により、それまでの世界観が崩壊していく過程なのだ。
そもそも「恐竜」なる言葉自体が一九世紀の中頃まで存在しなかった。恐竜というものが、進化や絶滅といった概念とセットで簡単にイメージできる現代とはまるで違うのだ。だから恐竜発見といっても、最初は巨大な骨の化石を前にして「いったいこれは何だ?」と途方に暮れるほかない。ゾウか、はたまた巨人か。だが、地質学や古生物学で様々な発見が続くに従って色々とわかってくる。人間登場以前の気が遠くなるほどの大昔、地球にはトカゲに似た怪物たちが無数にいたが、その後、絶滅してしまったようだ、と。
まさか。天地や生物は、およそ六千年前に神が人間のために創造したのではなかったか。万物は人間に照らして意味づけられ、エレガントな調和のもとに永久にあり続けるはず。こうした世界観は、しかしながら、恐竜の化石という大迫力の証拠を突きつけられて維持できなくなっていく。さらに、人間の自己像にも再考が迫られる。恐竜が滅んだなら、我々もまた不変不滅の特別な存在ではないのでは? 最後にダーウィンが登場するまでに描かれる世界観の激震とその後の再生への道筋がスリリングだ。
それだけではない。恐竜発見にまつわる個々の科学者についての記述も興味深い。ひときわ印象的なのが、膨大な化石を発見したメアリー・アニングだ。近年は、ロザリンド・フランクリンと並んで、その功績の見直しが進んでいるという。科学は多様な生身の人間の手により前進していく共同事業である。恐竜発見の歴史を通じてそのことを再認識できる点も本書の大きな魅力だ。
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Edward Dolnick ジャーナリスト・作家。米ボストン・グローブ紙の元科学記者。他の著書に『ヒエログリフを解け』。
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杉田七重訳