日本の製造業はIoT先進国ドイツに学べ [著]熊谷徹
最近、話題の「IoT(モノのインターネット)」とは、機械や部品、製品をインターネットで結び、生産性や顧客満足度を高める取り組みだ。
中でもドイツ版IoTは、2011年に発表された「インダストリー4・0」。その特徴は、最初から国家プロジェクトとして始まったことで、これは民間主導でIoTを進める米国とは対照的だ。
著者は、日本もドイツ同様、政府主導でIoTを推進すべきだと説く。企業に任せると、利潤を最大化するため雇用削減など弊害が出るからだ。政府が介入し、悪影響を最小限に抑えるべきだという。
しかし本家ドイツの試みは停滞している。ドイツ電気・電子工業連盟が14年末に発表したアンケートでは、実際にインダストリー4・0の運用を開始した企業は僅(わず)か7%。一因は、ドイツ経済を担う「ミッテルシュタント(中規模企業)」が、IoTに伴う製造ノウハウの流出などを懸念しているからだ。政府によるトップダウン方式の難しさが現れている。
また評者の私見では、日本はドイツとは対照的に財政状況も厳しく、過去に成果の乏しい国家プロジェクトも少なくないことから、より慎重な姿勢が求められるだろう。
(小林雅一=ジャーナリスト)=朝日新聞2017年6月11日掲載