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「復興キュレーション」書評 新しい博物館像を示す

評者: 五十嵐太郎 / 朝⽇新聞掲載:2017年03月05日
復興キュレーション 語りのオーナーシップで作り伝える“くじらまち” (キオクのヒキダシ) 著者:加藤 幸治 出版社:社会評論社 ジャンル:社会・時事・政治・行政

ISBN: 9784784517343
発売⽇: 2017/01/17
サイズ: 19cm/254p

牡鹿半島の鮎川浜をフィールドとした、東日本大震災以降の文化財レスキューと企画展の報告と提言。対話から地元の記憶を引き出す企画展示の見せ方を試行錯誤する様子を、「聞書き」と…

復興キュレーション―語りのオーナーシップで作り伝える“くじらまち” [著]加藤幸治

膨大な犠牲者と建物の凄(すさ)まじい破壊が目立つために忘れられがちだが、3・11は地域の文化に多大な被害をもたらした。本書は文化被災の状況に対し、仙台に暮らす民俗学の研究者・学芸員が、ゼミ生らととりくんだ活動の記録だ。最初は震災3カ月後に石巻で着手した文化財レスキューだ。その過程で、災害拠点病院で見た治療優先順位の決め方をヒントに、現場で文化財レスキューカルテを作成したという。次に2012年8月から試みたのが、被災した民具などを展示し、地域住民に生活の記憶を語ってもらうイベント、カフェ、ワークショップである。
 最後に示されるのは、国際的な討議を踏まえた新しい博物館像だ。それはただモノを並べる静的な施設ではない。住民と専門家が対話し、社会関与型の実践をダイナミックに行う文化創造の場だ。本書の問いかけは、今後被災地につくられる博物館にとって重要であるだけでなく、現代美術の動向とも共振するだろう。