愛憎のジェットコースター
恋に溺れる蘭花と、蘭花に深い友情を寄せる留利絵という2人の若い女性が主人公の物語です。蘭花の恋人の不可解な死があり、愛憎が絡み合いながら驚きの結末につながるのですが、どこに連れて行かれるか分からないジェットコースターに乗っているような感じでした。
人を思うということでは同じなのに、ベクトルが違うと、見える世界がまるで違う。愛し過ぎて憎くなる。それを相手にぶつけてしまう。思いが強いだけ、精神的に相手を殺し合っているような感じ。すごい怖さがありました。そういうことは現実の世界でもあるような気がします。人というのは、腹の中に刃物を隠し持っているのかもしれません。
また、この作品には「親友の定義とは、なんだろう」という言葉が出てきます。確かに、恋人同士には「好き」という気持ちの確認があるけれど、大人になればなるほど「私たち親友だよね」とは言いません。それに多くの場合、恋が友情に勝ってしまいます。「気持ち」という目に見えないものについても考えさせられました。
読み終わったとき、心にズーンと何かが残る本があります。この作品もそうです。本からもらった重いものを、自分でかみ砕いて考えて、自分の中に落とし込んでいく時間を、私は大切にしたいと思っています。
(聞き手・西秀治、写真・Gric提供)=朝日新聞2018年5月5日掲載