活弁の足場、意味づけてくれた
サイレント映画に合わせ場面の状況や俳優のセリフを、話芸として伝える活動写真弁士(活弁)の道を2001年から探究しています。07年ごろ見識を広めようと思って手にしました。
活弁付き映画の上映形態や観客の関わり方が歴史的に説明してあって、多くのページに付箋(ふせん)を貼りました。俳優より弁士の人気が集客を左右した時代もあったり、観客と弁士が直接コミュニケーションをとったり。サイレント映画は、案外うるさかったのです。本の内容を参考にして十数分間の動画「活動写真いまむかし」を作りました。独演会では、この動画に続き、ピアノ弾き語りの洋画、大正琴弾き語りの邦画などを流します。作曲も絵も手がけます。得意な作品は「雷電」「豪傑児雷也」「豪勇ロイド」などで1~70分程度です。
サイレント映画にはくみ尽くせぬ面白さがあって、博物館に眠らすのはもったいないですね。今、活弁の需要も増え、今年、活弁をテーマにした周防正行監督の映画も公開予定です。
私はスクリーンの中に入り込まず、常に外に身を置きます。出演俳優たちと対話して突っ込みを入れたり、手を振り合ったり。ご当地の方言を挟むこともあります。それが「バニラワールド」ですね。そんな自分の足場を固めることにつながった、この新書に感謝しています。(聞き手・写真 米原範彦)=朝日新聞2019年2月2日掲載