穂村弘「蚊がいる」書評 ひざを打つようなエピソード満載
評者: 朝日新聞読書面
/ 朝⽇新聞掲載:2013年11月17日

蚊がいる
著者:穂村 弘
出版社:KADOKAWA
ジャンル:エッセイ・自伝・ノンフィクション
ISBN: 9784040666297
発売⽇:
サイズ: 20cm/232p
蚊がいる [著]穂村弘
〈曖昧(あいまい)な気持ちのまま曖昧に行動して曖昧に間違えてしまう〉。どうして自分はそうなのか、なぜほかの人はそうではないのか……。歌人の観察眼はヘンに澄み渡り、言葉にできないようなもやもやした思いが次々とコトバに置き換わる。ひざを打つようなエピソード満載の随筆集。例えば桜。どうせなら「最高の桜」を捉えたいという気持ちが変な緊張感をつくりだし、ちゃんと楽しめずに桜の季節が過ぎてしまうというホムラさん。〈「最高の今」を捉えたいと願う気持ちの強さが、逆に「今」を生きることから私を遠ざける。「今」のハードルをあげてすべての行動を保留にしてしまうのだ〉。巻末の又吉直樹との特別対談も面白い。
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メディアファクトリー・1575円