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「給食の歴史」書評 学校食の意外な役割をひもとく

評者: 椹木野衣 / 朝⽇新聞掲載:2018年12月22日
給食の歴史 (岩波新書 新赤版) 著者:藤原辰史 出版社:岩波書店 ジャンル:新書・選書・ブックレット

ISBN: 9784004317487
発売⽇: 2018/11/20
サイズ: 18cm/268,17p

給食の歴史 [著]藤原辰史

 給食と聞くと、誰もがなにがしかの思いを抱く。おいしい、まずい。早い、遅い。それらに付随する淡い思い出。でも、皆で同じものを同じ場所でいっせいに食べるのは大きい。
 高校で弁当持参となると、悲喜こもごもになった。手の込んだ飾りつけが多くの目を引くすぐ隣で、弁当の蓋を立て隠して食べている。小銭を握りしめ、一目散にパン売り場へと姿を消す。そのことで深く傷つく子供もいたはずだ。
 給食と違い、弁当は家庭の事情の隠しがたい反映だった。各人で異なるのは仕方がない? それが本書を読み、新たに知って驚いた。給食とは、容易には消えない食をめぐるこうしたスティグマ(負の印)を、子供たちに与えないのを第一の使命にしていたことを。
 ほかに日本で給食が自然災害と深く結びついているという指摘にも多くの発見があった。貧困と災害の話題が絶えないいま、給食とはなにかを振り返り、これからを考える絶好の一冊。