「謎のカラスを追う」書評 ハシブトガラス分布の境界探す旅
評者: 保阪正康
/ 朝⽇新聞掲載:2019年02月16日
謎のカラスを追う 頭骨とDNAが語るカラス10万年史
著者:中村 純夫
出版社:築地書館
ジャンル:紀行・旅行記
ISBN: 9784806715726
発売⽇: 2018/11/23
サイズ: 19cm/268p 図版12p
謎のカラスを追う 頭骨とDNAが語るカラス10万年史 [著]中村純夫
ハシブトガラスの分布域は広大で、東アジア、インド、東南アジア、アフガニスタンに及ぶという。それぞれ環境に適応した結果、独自性を持つ。日本列島にはジャポネンシス、ユーラシア大陸側にはマンジュリカス、というハシブトガラスが生息しているそうだ。
著者は生物学を体系的に学んだのではない。高校教員の後、40歳近くなってからインデペンデント・リサーチャーとして、サハリンなどに2種の交雑帯があるのでは、と研究を続ける。
調査のため、その地域を回った。許可を得て、地元の人にカラスを射殺してもらい、種類、形態、遺伝子などを調べて、ハシブトガラス分布の境界線を確定しようというのだ。本書はその調査の旅を中心としているが、著者のバイタリティーが新しい発見を生み出していることがわかる。
結論はジャポネンシスは北海道が北限、マンジュリカスはサハリンが東限だとか。これで謎は解決されたと、著者の筆は滑らかだ。