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家事も仕事も完璧主義を捨てなさい プレジデント ウーマン・木下明子編集長が語る女性のこれからの働き方

男が悪い、社会が悪い、政治が悪い?

――いきなりの質問で恐縮ですが、日本社会において、女性が働く環境についてどのように捉えていらっしゃいますか?

 日本はよくダメダメだと言われますが、制度は世界一のレベルですよ。私は産休育休を合わせて約8カ月とって、その間十分な給付金が出たと言ったら、アメリカに住む友達には「日本は世界で一番恵まれている」と言われました。

 ただ、アメリカは制度は整っていませんが、それでもすぐに仕事に復帰はする。その違いは何かと言ったら、意識の違いだと思います。日本は意識がすごく遅れています。

  例えば、子どもを預けるということに関して。私の母は学校の先生として働いていたので、産休2カ月で仕事に復帰しました。私は生後2カ月で祖母に預けられ、祖母に育てられた。ですので、私にとって子どもを預けて働くというのは当たり前のことでした。

  ベビーシッターを雇うことや保育園に預けることに罪悪感を持つ必要は全くないのに、今の日本にはそれに対してまだ攻撃する人がいますよね。それは専業主婦の人かもしれないし、男の人かもしれないし、親世代なのかもしれませんが、「こんなに小さい子どもを預けて……」と。

  例えば、家事に関して。調理時間が短すぎると罪悪感があるという人もいるそうですが、フルタイムで働き、きちんと納税しながら、専業主婦の方と100%同じことはできないですよね。そういった意識を社会全体で何とか変えていかないと、女性活用も何も始まらないのではないでしょうか。 

――意識が変わっていけば、女性は今以上に活躍できるということでしょうか?

 平等を叫ぶのであれば、当然責任もかかってきます。育休を取る権利はもちろんあるのですが、その間のコストは会社や社会、自分以外の誰かが負担している。そのことは意識をしないといけないと思います。「私は子どもを産んで、働いてえらいのよ」というのはちょっと違うかなって。

 女性活用に関して日本は後進国で、うまく働く女性が増えていかない現実について、どうしても男が悪い、社会が悪い、政治が悪い、という話になりがちです。確かに男性が悪い部分もあると思うのですが、全部彼らが悪いわけではなくて、女性自身にも「ちゃんと働くのだ!」ということを念頭においてほしいと思うのです。働くからには、きっちり社会的な責任がかかってくるのだということは意識しておいた方がいいのではないでしょうか。 

家事でも仕事でも完璧主義を捨てよ

――木下さんは4歳のお子様がいらっしゃいます。仕事とプライベートの両立のコツは何かありますか?

 「“丁寧な暮らし幻想”にさようなら 共働き“夕食は冷凍ピザ”に罪悪感は必要か」という記事をオンライン版で掲載したらすごく反響がありましたが、もう本当に完璧主義を捨てる時代だなと感じました。完璧でないといけないと思っている人があまりにも多い。日本の女性に足りないものは合理性なのだと思います。

 私は週1回、夜の10時までベビーシッター兼ハウスキーパーさんを雇っていて、保育園のピックアップから寝かしつけまで全部、それと掃除もお願いしています。それから、基本的に子どもには毎晩、晩御飯を保育園で食べてもらっています。ハウスキーパーさんが来て掃除をしてくれる前の日は相当散らかっていますけど、触らずに、救援が来るのを待っている状態です。罪悪感はありませんね。

 丁寧な家事や育児に関する雑誌がありますが、私も実はそういう雑誌を読むのが好きで、読む度に「ああ素敵ね」と思うのですが、それはファンタジーの世界に留めるようにしています。仕事から帰った後に夜中まで掃除しているなんて、絶対無理。どこかで破綻してしまう。

 まずは、仕事も家事も全体を俯瞰して、自分にしかできないことはどこかということを考えるべきです。母親しかできないことはあるので、それはやりたいと思うのですが、ご飯を作ったり掃除をしたりすることは、実は誰でもできるのです。すごくお料理が好きで、することがストレス解消になるのならいいのですが、それが元で体調不良になったり、時短することに罪悪感があったりしていたら、元も子もないです。

 あともう一点は、人生を長い目で見ましょう、ということ。日本人の女性は近視眼的になりがちで「時短のお給料で保育園代とベビーシッター代を払ったら収支がトントンだから、それなら1回辞めても同じなのでは……」と悩む人が結構多いのですが、キャリアが途切れてから、同等の職業につける人はどれくらいいると思いますか? よほど優秀でないと難しいと思います。キャリアダウンしてしまって、「こんなはずでは」となってからでは遅いです。

 子どもが小さいうちは正直お金がかかりますけど、これがずっと続くわけではありません。パートナーに何かあるかもしれないし、親御さんが倒れて介護が必要になることもあるかもしれない。長い目で見て、キャリアプランを立てた方がいいと思います。

 留学で「会社や社会を客観的に見られた」

――木下さんは長年雑誌編集に携わっていらっしゃいます。どのような思いで雑誌をつくっていらしたのでしょうか。

 女性向けの雑誌では共感とリアリティを大事にしています。

 読者を動かすというと大袈裟かもしれませんが、記事を読んで、一つでも学んで、何か変わってくれたらいいなと考えています。女性はやはり「あ、これ私と一緒だ」という共感とリアリティが大事だなと思っていて。

 弊誌では「女性役員の『失敗は星の数ほど』」という連載が人気なのですが、素晴らしい経歴をお持ちの役員でも、悩んでいたり落ち込んでいたりする時があります。そこが共感を集めているようです。

――木下さんは社会人8年目のときに、一旦退社されて、カナダに留学されています。なぜですか?

 ちょうど留学ブームの時期で、当時の上司に「なぜ君だけ英語ができないんだ。酒も飲めなくて、英語もできなくて、君は出世しない!」みたいなこと言われたんですよ。今思うと、本人はたぶん深い意味はなく冗談で言ったのでしょうが、当時の私は純粋でしたので(笑)、「英語はできないといけないのかな……」と思ったし、留学経験がない人間として一生終わるのは嫌だなぁと思って。

――いま、ご自身留学の経験が生きているなと感じられますか? 

 英語や中国語で取材するなど、語学の面で良かったことはありますが、留学して勉強したことが役に立っているかというと、実はあまり役には立っていないかも。

 むしろ、外に出て、会社や日本社会を客観的に見られたことが一番良かったです。これは意外でした。自分がやってきたことにいろいろ悩んで留学したのですが、あんまり悩まなくて良かったなと。給料が出ない経験をして、それでも何とか持ちこたえられたという変な自信もつきました。それまで何かできないことがあると海外経験がないことを言い訳にしていましたが、その言い訳も通用しないことが分かりましたね。 

「賢く働き、しなやかに生きる」ため

――改めて「プレジデント ウーマン プレミア」は、どのようなターゲットの読者層を想定されているのでしょうか? 編集方針も合わせて教えてください。

 30代後半ぐらいから40代の働く女性で、管理職もしくは管理職を目指す人、何らかのリーダーでありたい人をターゲットにしています。仕事も人生も自分で決めたい、引っ張っていきたいという意思のある働く女性です。

 月刊から年4回の季刊になったので、少し分厚くなりました。より読者のリアルな悩みやご要望に応えていきたいと思っています。賢く働き、しなやかに生きるというのがキャッチコピーです。大きな方向転換はないですが、より高いところを一緒に目指していこうと思っています。

――リアルな悩み、というと?

 女性は不安が結構強いと感じますね。先の完璧主義の話にも通じるのですが、例えば、男性の場合は昇進をオファーされたとき、まず断らないですし、準備させてくださいとは言わないですよね? ところが女性になると「私、まだ大丈夫かしら?もう少し準備してから……」というような人が多いのです。

 特集「ゼロからわかる会計&数字」(2018年6月号)が特に売れ行きが好調だったのですが、経済や歴史などリーダーとしての素養をつけておきたいというニーズがあるということには応えていきたいと思います。勉強熱心で、上に上がっていくために学んでおきたい、磨いておきたいという思いは男性よりも女性の方が強いかなという気がするんです。「備える」というのがキーワードだと思います。 

春号は、「海外女性に学ぶ、しなやかな働き方」

――3月28日発売の春号の特集は「海外女性に学ぶ、しなやかな働き方」です。ぜひ見所を教えてください。

 読者の声でも、海外女性の記事を読みたいという要望が多くありました。海外の女性活用先進国の女性の働き方、生き方、プライベート、とオンもオフも見せることで、何か学びがあるといいなと思いますし、先進国だから何でもかんでもパラダイスかというわけではなくて、海外の女性も彼女たちなりに悩んでいることはあって。

 この特集では、綺麗な部分だけではなくて、やはりリアルな悩みを共有したいですし、オンとオフの区別、あと家庭と仕事の両立などを学んでいただけたらなと思います。

――最後に、これからの「プレジデント ウーマン」の展望を教えてください。 

 女性のビジネスライフをより充実させるための交流会「PRESIDENT WOMAN Salon」をはじめました。先行メンバーを募集したところ、500人近くの方にご応募いただきました。正直こんなに集まるとは思っていませんでしたが、交流したい、学びたいという意識が強い人が多いのだと実感しました。そういうリアルなコミュニケーションも含めて、読者の方と一緒に高いところを目指していけたら。

 弊誌を見ていただくことで、少しでもその日の仕事のモチベーションが上がって、「もうちょっと頑張ろう」と清々しい気分になってもらえたらいいなと思います。

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