西洋の印刷術を使い、16世紀に熊本・天草で刊行されたキリシタン関連資料の原本の画像を、国立国語研究所(東京都立川市)がホームページで公開した。原本は英国の大英図書館に1冊しか現存しておらず、研究者にとっては閲覧の機会が増える好機といえる。
3月から公開が始まったのは『平家物語』と『伊曽保(いそほ)(イソップ)物語』、金言を集めた『金句集』を合本にしたもの(縦17センチ、横11センチ)で、計723ページ分。イエズス会が宣教師の日本語学習向けに作った読本で、1592~93年、天正遣欧少年使節がヨーロッパから持ち帰った印刷機を使い、天草で印刷された。大英図書館に渡った理由は不明。
いずれも当時の話し言葉がポルトガル式のローマ字で書かれており、発音を知る上でも貴重な資料となる。たとえば「NIFON(日本)」「FEIQE(平家)」などの表記からは、ハ行が「F」の音で発音されていたことがうかがい知れる。西洋印刷術導入の草創期のものであり、印刷史の観点からも重要だ。
今回は表紙から裏表紙まで、1ページずつ順番にカラー画像で公開している。影印本が1976年に出版されているが、モノクロ画像で不鮮明な部分があるほか、裏写りもあり、精密に判読するには限界があった。
同研究所が構築中の言語データベース「日本語歴史コーパス」による検索から、該当する原本の画像にたどりつくこともできる。問い合わせは同研究所(042・540・4300)。(小西孝司)=朝日新聞2019年4月10日掲載
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