『何者』(朝井リョウ、新潮社、2012年)
就職活動を目前に控えた拓人は、同居人・光太郎の引退ライブに足を運んだ。光太郎と別れた瑞月も来ると知っていたから――。瑞月の留学仲間・理香が拓人たちと同じアパートに住んでいるとわかり、理香と同棲中の隆良を交えた5人は就活対策として集まるようになる。だが、SNSや面接で発する言葉の奥に見え隠れする、本音や自意識が、彼らの関係を次第に変えて……。直木賞受賞作。(新潮社ウェブサイトより)
・現代のSNSなどを利用し、リアルな学生の就職活動模様が描かれているため。他者と比較しながら、探りながら、見栄を張ったり、人と人との繋がり方もかかれており、平成を代表する本。(兵庫県・あべさや)
・今では当たり前のように身近な存在であるSNSのネタを取り入れ、口に出しては言えないことを本の中で、主人公がズバッと切り込んでくれるのが良かった。(山口県・まとか)
※朝井リョウさんは、『桐島、部活やめるってよ』(集英社、2010年)にも多くの支持が寄せられました。
『図書館戦争』(有川浩、KADOKAWA、2006年)
2019年(正化31年)。公序良俗を乱す表現を取り締まる『メディア良化法』が成立して30年。高校時代に出会った、図書隊員を名乗る"王子様"の姿を追い求め、行き過ぎた検閲から良書を守るための組織・図書隊に入隊した一人の女の子がいた。名は笠原郁。不器用ながらも、愚直に頑張るその情熱が認められ、エリート部隊・図書特殊部隊に配属されることになったが……。(KADOKAWAウェブサイトより)
・現代におけるメディアの在り方、本の在り方、人それぞれの感じ方、考え方、戦うということ、恋、いろんな目線に着目した小説だと感じたからです。メディアミックスも多くあり、私自身、床屋の話はぐっとくるものがありました。(大分県・津島)
・図書館戦争は平成ではなく、正化という元号で、変わった世界が広がっているので、ぜひ、今のうちに知って欲しいなと思った。2019年が舞台なので平成最後の年に読んで欲しいです!(三重県・なつ)
『オーデュボンの祈り』(伊坂幸太郎、新潮社、2000年)
コンビニ強盗に失敗し逃走していた伊藤は、気付くと見知らぬ島にいた。江戸以来外界から遮断されている“荻島”には、妙な人間ばかりが住んでいた。嘘しか言わない画家、「島の法律として」殺人を許された男、人語を操り「未来が見える」カカシ。次の日カカシが殺される。無残にもバラバラにされ、頭を持ち去られて。未来を見通せるはずのカカシは、なぜ自分の死を阻止出来なかったのか?(新潮社ウェブサイトより)
・伊坂幸太郎伝説の幕開けとも言えるデビュー作。この出来をデビュー作で書ける作家がどれくらいいるだろうか。きれいな文章に素敵な登場人物、素敵な伏線回収。どれも見事で圧巻だった。(東京都・ひら)
・小説に革新を起こし続ける著者のデビュー作でもあり、激動の平成30年間を生きた多くの人々、社会の縮図のような物語だった。(宮城県・紅葉)
※伊坂幸太郎さんは、それぞれ異なる作品ごとに熱い支持の声が寄せられました。
『夜のピクニック』(恩田陸、新潮社、2004年)
高校生活最後を飾るイベント「歩行祭」。それは全校生徒が夜を徹して80キロ歩き通すという、北高の伝統行事だった。甲田貴子は密かな誓いを胸に抱いて、歩行祭にのぞんだ。三年間、誰にも言えなかった秘密を清算するために――。学校生活の思い出や卒業後の夢など語らいつつ、親友たちと歩きながらも、貴子だけは、小さな賭けに胸を焦がしていた。本屋大賞を受賞した永遠の青春小説。(新潮社ウェブサイトより)
・1日歩行(夜間歩行)という行事が、平成以降、受け継がれても、受け継がれなくても、「夜のピクニック」という作品だけはずっと、ずっとずっと、学生の本棚に置いてほしいと思いました。平成10年生まれの私が、小学生時代に初めて読んで、本の面白さ、楽しさ、読み切った後の達成感に気づいた作品です。学生でなくなった今も、読み返しては当時の気持ちを思い出します。登場人物たちのリアルな感情は、平成を学生として経験した人なら、誰もが共感すると思います!(福島県・あとり)
・恩田陸作品の中でも、一際記憶に残る作品ではないだろうか。この話の主人公の境遇は極めて特殊で、特別な世界観のある瑞々しい青春ストーリーだ。高校生の青春を描く小説は幾つもあるが、その中でもこの作品は老若男女を引きつける魅力がある。よって、平成を代表する本に推薦したい。(茨城県・須藤ゆかり)
※恩田陸さんは、直木賞&本屋大賞を受賞した『蜜蜂と遠雷』(幻冬舎、2016年)にも多くの支持が寄せられました。
『サラバ!』(西加奈子、小学館、2014年)
僕はこの世界に左足から登場した――。圷歩は、父の海外赴任先であるイランの病院で生を受けた。その後、父母、そして問題児の姉とともに、イラン革命のために帰国を余儀なくされた歩は、大阪での新生活を始める。第152回直木賞受賞作。(小学館ウェブサイトより)
・流されやすい情報社会の世の中で、西さんが「サラバ」を書いた意義はとても大きく、本当に勇気のある小説だと、読むたびに思います。「大切なものを見つける」という、一見ふわっとした抽象的なテーマを読み砕き、自分のものにしていく過程は、何にも代え難く貴重な体験ですし、科学のたゆまぬ進歩と、大災害、不安定な政治の中を生きた、平成の私たちに、勇気を与えてくれる一冊だと思い、この本を推薦しました。(神奈川県・かほ)
・阪神淡路大震災、オウムサリン、9・11、3・11、時代を象徴する大事件が描かれており自分が生きた平成の時間とリンクする部分が多い作品。(香川県・くるまだんきち)
『告白』(湊かなえ、双葉社、2008年)
我が子を校内で亡くした女性教師が、終業式のHRで犯人である少年を指し示す。ひとつの事件をモノローグ形式で「級友」「犯人」「犯人の家族」から、それぞれ語らせ真相に迫る。(双葉社ウェブサイトより)
・現在よく聞くようなSNSを用いた「いじめ」ではなく、直接混じり合う過激な「犯罪」。学校を舞台に、家庭問題も複雑に関わりあった酷い話が、平成の世に衝撃を与えたに違いない。昨今ニュースで聞かれる「いじめ」などには必ずSNSが用いられ、影や裏でどこまでも隠されてなくなったことになってしまうものが多く感じられるが、「告白」の中ではそれらを用いずとも水面下で「いじめ」や「犯罪」がおこなわれていてそのためには手段を厭わない(何も知らない先生を使ったりとか)生徒達がある意味“純粋”に描かれている。復讐を着々と進める先生にもある種の“純粋”とも感じる心を読み取れた。今この世界に、そのような犯罪が起こったら…と考えるだけで震えるからだが止まらないほど、この本は平成の時代に印象を残し、メッセージを残したと思う。(兵庫県・早田さん)
・映画化されるなど話題性もあり、「イヤミス」と呼ばれるジャンルが生まれるきっかけになった。(大阪府・めい)
『夜は短し歩けよ乙女』(森見登美彦、KADOKAWA、2006年)
黒髪の乙女にひそかに想いを寄せる先輩は、京都のいたるところで彼女の姿を追い求めた。二人を待ち受ける珍事件の数々、そして運命の大転回。山本周五郎賞受賞。(KADOKAWAウェブサイトより)
・大学生とはなんて変で面白い生き物だろう! そんな感想を持った本はこれが初めてでした。大学生を主人公とした物語は、ヒロインが難病になったり、地域の小悪党と戦ったり、そして最後に人生の教訓を教える、それが私がこのジャンルに持つ一般的なイメージでした。しかし、この本は主人公である一大学生が様々なイベントを通してヒロインとの距離を縮めていき、その度に変なことをするだけであり、訓示のようなものは何も出てこない。本が苦手な人でも面白く読めると思いますし、これから大学生になる人にもおすすめです。(京都府・小ダルマ)
・舞台は平成ではないが、不思議な世界観や文章のテンポ、言葉の選び方などがとてもユニークで現代的だと思う。(大阪府・こびと)
『インストール』(綿矢りさ、河出書房新社、2001年)
女子高生と小学生が風俗チャットでひと儲け。押入れのコンピューターからふたりが覗いた<オトナの世界>とは!? 最年少芥川賞受賞作家のデビュー作。第38回文藝賞受賞作。(河出書房新社ウェブサイトより)
・平成を代表するものと言えば「インターネット」ではないでしょうか。当時現役高校生だった綿矢りささんのデビュー作『インストール』は、平凡な日常に嫌気が差した高校生がひょんなきっかけでネットの世界に足を踏み入れる物語ですが、現実のやるせなさとネット社会の“あっけなさ”を巧みに描いていて「平成らしさ」を感じます。著者はこの2年後に史上最年少で芥川賞を受賞し大きな話題を呼びます。作品としても作家としても新しい時代の到来を感じさせた存在だと思います。(東京都・ささかわまりな)