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臨場感あふれる歴史小説

「呉書 三国志」

 この物語は、魏・呉・蜀の三国の中で、一番長く政権が続いた呉の国を中心につづられた孫堅父子のもう一つの三国志である。1800年前の中国を舞台にしているとは思えないほど、わかりやすい文体と臨場感あふれる戦闘場面の描写が見事で、思わずその世界へと引き込まれていく。
 後漢王朝が末期を迎え、農民による大きな反乱「黄巾の乱」がきっかけとなり、各地で群雄が割拠する内乱の時代がはじまり、孫堅も呉の国の興亡を担うことになる。彼は人望も厚く、統率力もあり領土をどんどん広げていったが、若くして戦死し、その後を長男の孫策とその弟の孫権が戦いながら国を守っていくことに。まさに「血湧き、肉躍る」歴史小説。(ちいさいおうち書店店長 越高一夫さん)

「キャプテンマークと銭湯と」

 サッカーのクラブチームでキャプテンだった周斗は、後から入団した大地にその座を奪われてしまう。チームメートともうまくいかなくなり、行き場のない周斗が見つけたのは住宅街にある銭湯だった。銭湯のおじいちゃん、おばあちゃんの人生に触れることで、積み重ねてきたもので自分自身が作られることを実感する。心のよりどころとなる場所があることは、大きな壁にぶち当たったときも切り抜けられる強さになる。主人公と目線の高さを合わせてくれる大人たちが頼もしい。上質な児童文学。  (丸善丸の内本店児童書担当 兼森理恵さん)

「ひみつのビクビク」

 異国で暮らすことになった子どもの気持ちを、わかりやすく描いた絵本。不安や恐怖をビクビクという存在で表現している。主人公の少女は、本当に危険なことを避けてくれるビクビクを友だちだと思ってきた。でも言葉もわからない異文化の中に放り込まれると、ビクビクがどんどんふくらみ、少女の気持ちは急速に縮こまってしまう。今後は日本にもこのような子どもが増えてくるだろうと思うと、テーマがタイムリーで、子どもの立ち直る力にも目が向けられている。(翻訳家 さくまゆみこさん)朝日新聞2019年4月27日掲載