まずタイトルがいい。身もフタもなく抗(あらが)いようもない現実を暗示しつつ、雨や川べりの道が印象的な作中の情景にも合う。時に激しく時にゆるやかに、濁ったり澄んだりしながら辿(たど)り着(つ)く先は同じという点で人生にも似ている。
物語は、高校進学を機に学校から近い叔父の家に居候することになった少年が駅に降り立つ場面から始まる。迎えに来たのは叔父ではなく見知らぬ女性。不思議な距離感の彼女(26歳OL)に案内された家で再会した叔父は会社を辞めて漫画家になっており、女装の占(うらな)い師(し)、世界中をフィールドワークする文化人類学の教授が同居していた。
そんな謎だらけの環境に放り込まれながら、少年は誰よりも大人な気配りを見せる。一方で、同居人のOLにほんのり惹(ひ)かれたり。しかし、高1男子が背負うには重すぎる秘密を知ってしまい……。
前作『子供はわかってあげない』同様、会話のキレが抜群だ。「いい子なんだね」「怒ってもどうしょもないことばっかりじゃないの」といったセリフが二重三重の意味で響いてくる。言葉のリズム、会話の間が直感的に伝わるフキダシの配置も見事。家族や男女の機微、コミュニケーションの妙に心がざわつく。=朝日新聞2019年6月15日掲載
編集部一押し!
-
売れてる本 井上ひさし・文、いわさきちひろ・絵「井上ひさしの子どもにつたえる日本国憲法」 考えぬかれたことばを味わう 南野森
-
-
杉江松恋「日出る処のニューヒット」 鈴木七月「かわりに嘘」に驚いた! 楽しく読ませる「なにこれ」の連続(第41回) 杉江松恋
-
-
鴻巣友季子の文学潮流 鴻巣友季子の文学潮流(第40回) 米国での日本文学人気とミュージカルの現在地 鴻巣友季子
-
今、注目の絵本! 「絵本ナビプラチナブック」 絵本ナビユーザーに最も人気のある絵本は? 人気作品30冊ご紹介!(2026年7月認定)【プラチナブック】 磯崎園子
-
あなたに贈る本 脳科学者の茂木健一郎さんが薦める3冊 若者たちへ いま手にとってみてほしい本 朝日新聞社
-
今めぐりたい児童文学の世界 「波の子どもたち」訳者・斎藤真理子さんインタビュー 心の自由を求める10代の姿を日本の中高生にも届けたい 大和田佳世
-
トピック 【PR 光文社・創英社・みすず書房・ミネルヴァ書房】プレゼント 朝日新聞1面広告の本、好書好日メルマガ読者計20名様に
-
コラム 「海をわたる言葉 翻訳家ふたりの往復書簡」中江有里さん書評 出逢いの不思議が生んだもう一つの〝家族〟 PR by 集英社
-
トピック 【プレゼント】柄谷行人さん最新作「私の謎 柄谷行人回想録」好書好日メルマガ読者10名様に PR by 講談社
-
インタビュー 平石さなぎさん「ギアをあげて、風を鳴らして」インタビュー 描いてわかった「シスターフッド小説」の魅力 PR by 集英社
-
インタビュー 江國香織さん「外の世界の話を聞かせて」インタビュー 頭の風通し良く、気持ちさっぱり自由になって PR by 集英社
-
インタビュー 【サイン入り本プレゼント】一木けいさん「嵐の中で踊れ」インタビュー 避難所で起きた再生の群像劇 PR by NHK出版