まずタイトルがいい。身もフタもなく抗(あらが)いようもない現実を暗示しつつ、雨や川べりの道が印象的な作中の情景にも合う。時に激しく時にゆるやかに、濁ったり澄んだりしながら辿(たど)り着(つ)く先は同じという点で人生にも似ている。
物語は、高校進学を機に学校から近い叔父の家に居候することになった少年が駅に降り立つ場面から始まる。迎えに来たのは叔父ではなく見知らぬ女性。不思議な距離感の彼女(26歳OL)に案内された家で再会した叔父は会社を辞めて漫画家になっており、女装の占(うらな)い師(し)、世界中をフィールドワークする文化人類学の教授が同居していた。
そんな謎だらけの環境に放り込まれながら、少年は誰よりも大人な気配りを見せる。一方で、同居人のOLにほんのり惹(ひ)かれたり。しかし、高1男子が背負うには重すぎる秘密を知ってしまい……。
前作『子供はわかってあげない』同様、会話のキレが抜群だ。「いい子なんだね」「怒ってもどうしょもないことばっかりじゃないの」といったセリフが二重三重の意味で響いてくる。言葉のリズム、会話の間が直感的に伝わるフキダシの配置も見事。家族や男女の機微、コミュニケーションの妙に心がざわつく。=朝日新聞2019年6月15日掲載
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