出倉ナオ「北高まちおこし部はまちおこさない」 アンチ青春と大人の思惑が交錯

北の大地にある架空の都市・象々(ぞぞ)市。北高文芸部の3人は、特筆すべき名物のない街で、部室を根城にダラダラ過ごしていた。しかし、あるきっかけから強制的に「まちおこし部」に改部させられることに。平穏を守りたい3人は、「アンチ青春」を掲げて団結するが、青春せざるをえない状況に……。
地元を活性化させる素晴らしい取り組み。そんな「まちおこし」を高校生が担うとなれば、クリーンかつキラキラな印象はさらに強化される。しかし、その裏側には寂れゆく街の住人や行政、機会を利用したい大人の思惑が蠢(うごめ)いており、その交錯が物語にスパイシーなユーモアをもたらしている。
北高の女子部員・アララギとライバル校の熱血女子・オーエド。対照的なふたりの造形もいい。主人公キャラのオーエドだが、圧倒的正しさでコーティングされた彼女の言葉より、停滞もよしとするアララギの主張の方が、街や住民を肯定的に捉えているように聞こえる皮肉。とはいえ、ふたりは単純な二項対立として描かれているわけではなく、そんな構成の妙も光る。
テンポよく、軽やかに読めてテーマは今日的。北高まちおこし部、これからも様々な大人の事情に巻き込まれて欲しい。3人は嫌がるだろうけど。=朝日新聞2025年5月3日掲載