――目も合わせない、口も利かない娘への「嫌がらせ」と称して、実際に3年間お弁当を作り続けたブログをまとめた原作ですが、お読みになった感想を聞かせてください。
篠原:嫌がらせで作り始めたお弁当が、これからどんな風になっていくんだろう?という面白さもあるし、この親子はこれからどうやって分かり合っていくのかな、というところも書かれているので、肩ひじ張らずに読むことが出来る本だなと思いました。キャラ弁の写真もインパクトがあって興味を持ったし、お子さんが見ても楽しめるんじゃないかと思います。私がまだこの作品への出演が決まっていなかった時、家にこの本を置いていたら「これママがやるの? こういうの、やって欲しい」って息子が言ってきたので、子供の食いつきも良い作品なんじゃないかなと思いました。
佐藤:子供との距離感を縮めることが出来たのが「お弁当」っていうのが新鮮でしたね。すごいアイディアだなと思うし、こうして映画化されるだけの力があったと思うので、そういう発想やひらめきがすごいなと思いました。
――実際に作ってみたいと思うお弁当はありましたか?
佐藤:娘の運動会の時、僕もキャラ弁を作ってみようと思って彼女の好きなキャラクターに挑戦してみたんですが、顔のパーツ一つ作るにしても、めちゃくちゃ難しいんですよ! 自分が演じた岡野に対して「お前、下手すぎるだろ~」と思っていたけど、いざやってみると難しいんですね。
篠原:私もお弁当作りはしますが、うちは男の子なのでキャラ弁は恥ずかしくなっちゃって嫌がるんですよ。お弁当って、子供が成長していくうちに段々と作らなくなって、遠のいてしまうじゃないですか。なので、今は作れる時にできる限り作って、しっかりと思い出作りをしておきたいですね。
私、お弁当って見えないところで作った人を思い出してくれるものでもあると思っているんです。子供がお弁当を食べている時は離れた場所にいるけど、心の距離は縮まるということをこの作品で改めて気づきました。子供たちがお弁当を食べている時に、私を感じてくれているといいなと思います。
――お二人ともお子さんがいらっしゃいますが、今回の役柄とご自身に共通する点や、親として感じたことを教えてください。
佐藤:僕が演じた岡野はシングルファーザーなので自分とは状況が違うんですけど、共感するところはありました。僕自身、子供のことは好きだし、一緒にいる時間も大好きですけど、妻がしばらく外出している時に「自分だけじゃフォローできないことがあるんじゃないかな」ってちょっとソワソワしてしまう瞬間もあったりして。岡野が、突然自分一人になってしまってからの、子供との接し方がギクシャクしてしまうところは分かる気がします。母親の圧倒的な存在の偉大さみたいなものは常に感じますね。
篠原:うちは男の子二人なんですが、映画では女の子二人の母親役だったので、育て方が違うなと感じました。かおりさんは娘さんたちをすごく丁寧に育てていて、しつけや礼儀もきちんと教育されているのですが、私のところは男の子なので、知らないことが多少はあってもいいし、もっと弾けて、野性的に育ってほしいという思いが強いんです。長男がもうすぐ中学生になるので、いずれ反抗期が来るのかなと覚悟はしていますが、反抗期や思春期って成長の過程だから、すごく楽しみでもありますね。
――本作では、お弁当が子供へのメッセージや愛情を伝えるためのコミュニケーションツールになっていますが、読み聞かせなど、本を通してご家族とのつながりを感じたエピソードを教えてください。
佐藤:子供がまだ小さいので、本でできるコミュニケーションというとやっぱり絵本になりますね。
篠原:うちも子供が寝る前に絵本を読み聞かせしています。私は子供がお腹にいる時から絵本を音読していたので、そのリズムがBGMのようになっていたんじゃないかな。生まれてから実際に読み聞かせを始めたのは、子供が7カ月くらいになってからだったと思います。最近は、二人とも本が好きになってきたみたいで「もっと読んでー!」っておねだりされるんですけど、私の方が眠くなって先に寝ちゃうこともあるんです(笑)。
――お子さんに読む本は、どんなジャンルが多いですか?
篠原:子供が小さいときは、まず文字を認識して慣れてもらおうと「あいうえお」とか、ひらがながたくさん書いてある本を見せていました。他にも、様々な色や形が並んでいるような絵本で色彩や造形を感じさせることから始めて、成長とともに、ストーリー性のある本を読んであげるようにしています。最近は『日本昔ばなし』をよく読んでいます。
佐藤:僕は気になった本はすぐ買っちゃいますね。よくお母さん同士でも「これ、子供が好きそうな内容だったよ」とか情報交換するじゃないですか。その本が自分の子供にはヒットしないかもしれないけど、読んだ経験は無駄にはならないと思うので。
――映画では、何事も行動する前から諦めて「やっても無駄」と言う双葉に「無駄なことはない」というかおりさんのセリフがキーワードになっていますが、それは読書経験にも言えることですね。
佐藤:本に関しては、子供や妻に「これ良いって聞いたけど、買ってもいいかな?」と聞かれたら「いいよ! どんどん読んでみな!」って言いますね。子供って、僕らが流してしまいがちな所にも「どうして?」と興味を持ったり、鋭いところを突いてきたりするじゃないですか。質問されてもすぐに答えられないときは「どう答えたらいいか調べなきゃ」って緊張することもありますよ。うちは上の子が今年で10歳になるんですけど、今は一緒に丸読み(句点まで読んだら次の人に変わる音読法)をしている時が楽しいですね。自分が今まであまり本を読まなかったので、子供にはたくさん本を読んでほしいです。
篠原:私も、子供たちにはなるべく幅広いジャンルの本に触れる機会を作りたいと思っています。私自身、仕事を始めてからはどうしても台本を読むことを優先して、自分の読書は後回しになってしまいますが、今は子供たちと本を共有する時間を大切にしたいと思います。